工場の資材管理部門の仕事内容について、半導体装置製造歴10年以上のゆとり課長が簡単にわかりやすく解説していきます。
資材管理とは
工場内の生産に必要な部品や原材料の在庫を管理し、生産時に必要な数量を正確に維持し製造へ供給する部門です。
工場によっては、材料管理チームや部品管理部門などと呼ばれるかもしれません。
工場の資材管理は受入れされた材料を
- 入庫
- 保管
- 出庫
- 引き渡し
の順で業務をおこなっていきます。
基本は工場内の部材管理がメインですが、必要に応じて部品や加工品の見積依頼や発注業務も資材管理が行うケースもあるでしょう。
その辺の役割分担は会社の組織によって変わりますよ。
資材とは
そもそも資材とはなんなのでしょうか。
「資材」とは、企業が経営・生産する上で必要な原材料・消耗品・部品を指します。
会社の営業活動に必要な消耗品、例えばペンやコピー機などは「備品」に該当するので、資材管轄の対象外とすることが多いです。
中でも資材は主資材と副資材の二つに分けられますよ。
それぞれどんな使い分けをしているのか説明していきますね。
主資材
主資材は、その名の通りで原材料として製品になるものを指します。
- 加工するための母材
- 装置に組み込む基板やモーター
など、製造工程内でメインに扱われるものたちが挙げられますよ。
もちろん製品に組み込むものなので、取り扱いには十分注意が必要です。
副資材
別名「間接材」。
製造上級者は、Maintenance(メンテナンス)・Repair(リペア)・Operations(オペレーション)の頭文字をとって「MRO」と呼んだりします。
製品に直接関与しないけどものづくりには欠かせない消耗品などを指します。
例えば、
- ドリルやレンチなどの工具類
- 切削油や燃料などの薬品系
などが挙げられます。
私の工場ではねじロックなどの接着剤も副資材に含まれています。
「え?接着剤は製品に塗るから直接関与してるじゃん!」
というツッコミもありますが、まあなんかその辺は工場によってルールが違うみたいです。
資材管理の仕事
「資材管理の仕事って具体的にどんなことするの?」
「仕事の難易度ってどのくらい?」
資材管理のお仕事に興味がある方、ここ最近で資材管理部門に配属された方は気になりますね。
日々どんな業務を行っているのでしょうか。
ここでは、資材管理の仕事について5つ紹介していきます。
チェックして、なんとなく材料管理についてのイメージができるようになりましょう。
部品発注
使用頻度の高い部品や、常に持っておきたいような標準在庫部品の発注は、資材管理で在庫数を監視し、部品の発注業務を行います。
会社によって、発注などの業務は購買部や生産管理などの部署に任せて、資材管理は物の取り扱いのみのケースもあります。
とにかく、生産開始時に「物がなくてつくれません」とならないように、迅速な発注と納品日の調整が必要です。
購入依頼書を作成したり、メールや電話をつかって部品メーカーや委託業者への問い合わせが発生するでしょう。
外注管理
「うちの工場内で作ってる時間ないな…」
「もう少しコスト抑えて生産できないか…」
こういった課題があると、他所の工場へ図面と部材を渡して製作してもらう方法(外注)を検討します。
外注を利用する時の窓口も、資材管理もしくは生産管理が担当するケースが多いです。
外注先への部品払い出し、納期回答の受付など行い、物の出入りを管理していきますよ。
外注先で滞りなく作業ができるように、円滑なやりとりが重要となっていくでしょう。
在庫管理
納品された資材は会社の資産なので、誰でも好き勝手待ち運びできなよう厳重に管理をしていきます。
品質維持はもちろん、数量も購入した分から使った分まで履歴をしっかり残し、手持ち在庫数が理論在庫数通りあるかどうかを常に監視しなければなりません。
「この部品はあの棚の何段目の左から何番目にある」
といった情報を部品ごとに住所を割り当てて(ロケーション管理)、誰でもすぐに見つけられるような仕組みづくりも重要です。
図書館で本を探すのと一緒ですかね。
梱包
製品の品質を維持させるための梱包作業を行います。
傷や打痕が入らないように、プチプチなどの緩衝材で覆ったり、基板などは静電気の影響で壊れないように帯電防止用の梱包材などで保管していきますよ。
梱包材はなんでも良い訳ではなく、資材の特性に合わせて選定する必要があるのです。
払い出し
必要な資材がそろったら、製造部へ引き渡します。
引き渡すタイミングも後工程と相談しておきましょう。
まだ製作しないものの部品を製造部へ早く引き渡しても、資材の一時保管スペースが発生し作業場が圧迫するだけです。
必要な資材を必要な時に渡すジャストインタイムが求められますよ。
資材管理あるある
資材管理のお仕事内容について、イメージできてきましたか?
「地味で簡単な仕事」と思うかもしれませんが、実際やってみると結構大変です。
では、実際にどんなところが大変なのでしょうか…
ここからは、工場勤務の現役従業員がよく悩まされる資材管理あるあるを7つ紹介していきます。
日常どんなことで悩まされるのかを把握し、資材管理の職場で求められるスキルを予め知っておきましょう。
在庫ずれ
どの工場でも在庫数は常に監視されていますが、実物を見ずに端末を利用しデータ上に表示される数字で在庫数を管理されいる方がほとんどです。
とある資材の在庫数を知りたいときに、いちいちその資材が保管してある現場までいって、一から数えるなんて面倒くさいですからね。
ちゃんとルールに沿ってミスなく資材の入出庫ができていたら、
「データ上の在庫数(理論在庫数)」=「実際にある手持ち在庫数(実在庫数)」
になるはず…
しかし実際は、数を間違えて多く出庫してしまったり、入出庫処理が漏れたりするなど業務上のミスが原因で、理論在庫数と実在庫数が一致しない「在庫ずれ」が生じてしまいます。
在庫ずれが発生すると
「理論在庫上は10個あるはずなのに実際は8個しかない!やばい!明日使う予定の資材が2個足りない!」
といった状況に陥り後工程に影響を及ぼす。
最悪、納期遅延となり、客先へ迷惑をかけてしまう可能性も十分にあり得るでしょう。
棚ありすぎ
管理している資材の大きさや種類が多いと、その分、保管スペースも大きくなるでしょう。
場合によっては、巨大な倉庫が必要になるかもしれませんね。
細かいものから大きなものまで、いろんな資材が広い倉庫の棚に管理されていると、どの棚にどの資材が保管されているのか、見つけるのもなかなか大変になってきますよ。
資材を探す時間が長くなると、スムーズに後工程へ物が流れていきません。
みんなが探しやすく、わかりやすい棚のロケーション管理が必要なのです。
品違い
ピッキングした部品が、指定された部品と異なって後工程に流れていくケース。
「人間誰でも間違えることはある」と言いたいところですが、間違った部品を気づかないまま機械に組み込んでしまうと事故を招いてしまう危険性もあり、ヒューマンエラーの一言で片づけられません。
- 部品の形や型式名が似ていた
- 棚へ入庫する段階で間違っていた
- 保管場所が隣同士で部品が混在していた
品違いを発生させてしまう要因を考えていくと、いろいろ出てくるでしょう。
こういった要因を一つ一つ潰して対策をたてることでピッキングの精度は向上していきます。
数量まちがい
指定された数量に対して、多かったり少なかったりしても、市場クレームに発展してしまう恐れがあります。
また、在庫数を狂わせてしまう原因にもなるため、数量間違いが積み重なっていくと後々生産管理や事務の方々が混乱してしまうでしょう。
特に小さかったり、厚みが薄いなどの数えにくい部品は注意です。
数量間違いをおこさないためにも、従業員同士のダブルチェックや、自動カウント装置の導入などが必要となってくるでしょう。
部材が行方不明
毎日、いろんな資材を取り扱っていると、ものの行先がよくわからなくってしまうケースがあります。
例えば、
- 払い出したはずの部材なのに、後工程から「受け取ってない」と言われる
- 何日か前に納品されたはずの部材が届いていない
といったやりとりが挙げられますよ。
ものが紛失すると、関係部署間で「俺はやってない」「知らないよ」などの言い合いが始まり、なかなか進展しません。
そうならないためにも、資材を移動するときはどこに置いておくのか、移動履歴をどのように残していくかなど、前後の工程できちんと話し合っておきましょう。
付属品の添付漏れ
一つの資材でも梱包形態が複数分かれているケースがあります。
よくありがちなのは、メーカー部品の付属品を出庫時にスルーしてしまうケースです。
以前、私が工場内をうろちょろしていたら、
「この部品は専用のネジが別の袋で入っているから、セットで出庫しないとだめだよ!」
と資材管理の新人さんが先輩従業員から注意されている現場に遭遇しました。
当時の新人さんは、添付品がそもそもあることすら気づいていなかったようです。
この場合の再発防止対策は、個人に指摘するだけでなく、
「この部品は梱包形態が複数に分かれている」
という情報が誰にでも伝わるようなしくみづくりが必要と言えるでしょう。
棚卸がつらい
資材は会社の資産であるため、データ上の在庫数と実物がきちんとあっているかの調査を定期的に行います(棚卸)。
工場内でも管理する品目数が圧倒的に多い資材管理では、棚卸時期になると、残業や休日出勤が増える傾向にありますよ。
なぜなら、棚卸期間中は正確に在庫数をカウントするため、ものの流れ(入出庫)を一度止めるからです。
また、カウントを終えても理論在庫数と実在庫数が一致しないと「なぜ多い?なぜ少ない?」の考察をしなければなりません。
棚卸を実際やってみると、資材管理の難しさが実感できるかもしれませんね。
まとめ
個人的ではありますが、今回紹介した資材管理の仕事は、工場内でもなかなかやりがいのある部門であると感じます。
なぜなら、工場が抱える闇の部分が直接的に見えやすいからです。
いや、すみません言い方をかえると、いろんな課題が明確に表れるので、改善のネタがたくさん見つけられます。
資材管理に配属になったら、まずは難易度の低そうな課題を見つけてどんどん改善をしていきましょう。
適正在庫を正確にきちんと管理できる仕組みや環境づくりが非常に重要となってきますよ。
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