機械材料には欠かせないアルミニウム合金について半導体装置製造歴10年以上のゆとり課長が簡単にわかりやすく解説していきます。
身近なアルミニウム
どんなに機械材料に詳しくない方でも、アルミニウムって言葉は皆さん馴染みがあるのではないでしょうか。
身近にアルミが使われているもので何が挙げられますか?
- ガムの包紙
- アルミホイル
- 一円玉
- 空き缶(コーラとか酎ハイなどの冷たい飲料水によく使われている)
このラインナップだけで見ると、
「なんか安っぽい」
「金属の中でも強度がペラペラ」
と思っちゃいますよね。
そんなイメージがあるアルミニウムなんですが、我々ものづくりに携わる人間にとって、実はめちゃくちゃ優秀な機械材料なんです。
アルミニウムの特徴
「なんでアルミはよく使われるの?」
「アルミニウムの特性を知りたい!」
アルミニウムの何が良いのか気になりますよね。
機械材料としてよく選定されるのはなぜなのでしょう
ここでは、アルミニウムの特徴について7つ紹介していきます。
特徴を理解して、アルミニウムをうまく扱えるようになりましょう。
軽い
まず金属の中でもとにかく軽いのが特徴です。
物質の重さを計算する際に使う比重という値が鋼材の約3分の1であるため、乗り物や携帯サイズの機械など重量を抑えたい時に使いやすいでしょう。
「プラスチックだと強度が不十分だし、ガチガチに鋼材使っても重量オーバーしちゃうな…」
なんてときはぜひアルミを使ってみましょうね。
種類によっては強度高い
アルミ材の強度は正直ピンキリです。
アルミ材の中でも種類が複数あり、それぞれで強度はかなり変わってきます。
純度99%の純アルミニウムですと強度はなく、板材は手で簡単に曲げられますが、ジュラルミンと呼ばれるアルミ合金にもなると、だいぶ強度的にも強いと言えるでしょう。
特に7000系の超々ジュラルミンと呼ばれるアルミ合金にもなると、トップクラスの強度を誇りますよ。
「軽いのに強度も高い」という超優秀な金属であり、飛行機やモータースポーツの部品にもよく使われるくらい人気です。
加工しやすい
加工が難しいと、部品コストが上がってしまったり、加工精度にも影響してしまいます。
アルミ材は加工がしやすいので、その分使用用途の幅が広がるでしょう。
塑性加工と言って負荷を加えながら変形させることも可能ですし、穴あけや切削加工もしやすく、加工時間も節約できるため、生産性も良いです。
また、融点が低く溶かしやすいため、鋳造にもよく使われますよ。
熱伝導がある
熱伝導性に優れた金属は他にもあります。
例えば銅などがありますが、銅よりもアルミ材の方が価格が安いため、銅の代替え品として使われる傾向がありますよ。
モーターや基板の抵抗部品など熱がこもるような箇所にアルミ板を張り付けて、放熱板として活用することが可能です。
錆びない
アルミニウムは、表面に薄い酸化アルミニウム膜を自己生成しており、耐食性機能があります。
この膜によって、金属でありながらも錆の発生を防いでくれるのです。
純度が高いアルミほど耐食性に優れる一方で、合金など強度が高いアルミ材の場合、耐食性は劣ってしまうでしょう。
心配ならアルマイト加工(メッキ処理)がおすすめですよ。
再生しやすい
ものづくりの現場では、ただ生産するだけではなく、エコマテリアルといって地球環境のことも考える必要があります。
アルミニウムはリサイクルしやすい材料と言わています。
その理由として、不要となったアルミを一度溶かして、塊にする(インゴット)過程のエネルギー消費量が、他の金属と比較しても非常に低いという点が挙げられるでしょう。
ちなみに再生成されたアルミを二次合金地金と呼び、自動車のエンジン部品等に使われていますよ。
通電性がある
通電性が良い金属と聞くと、まっさきに銅が挙げられますが、アルミもしっかり電気を流してくれる金属です。
アルミの通電性は銅の60%ほどで劣ってはいるものの、比重は銅の3分の1である。
つまり同じ重量で見た時に、アルミの方が約2倍の通電性を持つという結果となります。
価格面と性能面から見てもアルミの方がコスパが良いため、大手電力会社の配電線は、近年になって銅線からアルミ線へ変更したとも言われていますよ。
アルミ材の種類
アルミニウムの特性を一部紹介していきましたが、何となく「便利な機械材料なんだんな」ということはわかっていただけたでしょうか。
便利な材料なので、早速材料を確保したいところですが、ちょっと待ってください。
実はアルミ材の中にもいくつか種類があって、それによって価格や強度など大きく変わってきますよ。
ここからは、アルミ材の種類について1000~7000番まで簡単に紹介していきます。
種類を理解して、適切なアルミ材を選定できるようになりましょう。
アルミ材の種類は4桁の数字で表されるので、順番に解説していきますね。
1000番【純アルミ系】
純度99%以上のストレートなアルミニウムで、強度はなく、板材は手で簡単に曲げれるレベルです。
一方で熱伝導性、耐食性に優れています。
A1050
純アルミニウムの代表的な種類です。
強度はありませんが、純度が高いため耐食性に優れています。
ちなみに、下2桁の数字は純度の数値を表しており、この場合「50」なので99.50%の純度があることになりますよ。
やわかいので変形させやすく、曲げ加工しやすい。
使用用途としては装飾品や送電線などが挙げれるでしょう。
A1085
下2桁が「85」なのでアルミ純度は99.85%になります。
そのため、アルミがもつ美しい光沢をより引き出せますよ。
ただし純度が高すぎるが故、表面は酸化してくすんでしまうため、外観の光沢を維持させるにはアルマイト処理(メッキ)は考慮しておきましょう。
2000番【AlCu系】
銅とマグネシウムを含んだアルミ合金です。
アルミ純度がおち、耐食性は下がるものの、強度はかなり期待できるので、優秀なアルミ合金となります。
A2017
「ジュラルミン」と呼ばれるアルミ合金です。
軽くて丈夫な加工しやすい機械材料と言ったら、まずこのジュラルミンが候補として挙がるでしょう。
材料詳しくない方でも「ジュラルミンケース」って聞いたことありませんか?
アクション映画や刑事ドラマなどでよく使われる身代金が入ったメタリックなケースです。
大事な貴重品を持ち運ぶケースに採用されているということは、重量と強度に期待されている材料だからですよ。
他にも航空宇宙機器などにもよく使われていますね。
A2024
「超ジュラルミン」と呼ばれるアルミ合金です。
言葉の通り「超」がついているため、ジュラルミンの進化版で強度がより高くなっています。
工場などの現場ではよく「超ジュラ」と呼ばれているので、覚えておきましょう。
3000番【AlMn系】
マンガンを加えて、1000番台の純アルミが持つ耐食性を維持しながらも強度を増した材種。
出番は少なめです。
A3003
3000番のアルミ材の代表的な材種。
純アルミニウムを使用したいけど、「ちょっと強度が不安…」という時に候補として挙がるアルミ材と言えるでしょう。
実際、切削加工で使う出番は少なく、成形品(型取って変形させる加工品)に使われることが多いイメージです。
アルミ缶などがその代表例と言えます。
4000番【AlSi系】
シリコンを多く含んだアルミ合金であり、熱に強いのと耐摩耗性が期待できます。
出番は少なめです。
A4032
4000番のアルミ材の代表的な材種。
熱膨張率の低さと耐摩耗性の高さが期待されています。
こちらも切削加工で使う出番はなく、熱に強いので鋳造するときに使われるイメージです。
エンジンのシリンダーケースやピストンなどに使われますよ。
5000番【AlMg系】
マグネシウムを多く含んだアルミ合金で、溶接や加工がしやすい人気の材種です。
アルミ材の中で、最も流通量が多いとされています。
A5052
5000番のアルミ材の代表的な材種。
柔らかすぎず、硬すぎない材質であるため、切削しやすく加工性は抜群に良いです。
強度はアルミ材の中で中間的な立ち位置であり、そこそこの負荷にも耐えてくれるでしょう。
ただし、2000番(ジュラルミン)の強度には及ばないので、負荷がかかりやすく強度が必要な場所に使用する際は、板厚を十分にもたせるなど慎重に検討しましょう。
6000番【AlMgSi系】
シリコンとマグネシウムを多く含んだ、アルミニウム合金であり、5000番より強度と耐食性が高い傾向にありますが、一方で溶接には不向きの材種となっています。
A6063
プレス加工(押出し加工)などに多く使用され、複雑な断面を持ったアルミサッシなどに使われています。
5000番のA5052とよく比較されますが、切削加工はA5052でプレス加工はA6063を使うイメージです。
ホームセンターなどで買い物に行くと、長い棒状の角パイプ(アングル材)をよく目にしますが、ほとんどがこのA6063に該当しますよ。
7000番【AlZnMg系】
亜鉛とマグネシウムを含んだアルミ材であり、最強クラスの強度を誇ります。
A7075
「超々ジュラルミン」と呼ばれるアルミ合金です。
A2024の「超ジュラ」に加えてさらに強度が増しているので、軽さ重視しながらも、ガチガチの強度を求めたい時の機械材料における最終兵器と言っても良いでしょう。
強度は最強ですが以下のような欠点(デメリット)もあります。
- 硬いので切削加工が難しい(切削後のバリも硬いので除去するのに手前かかる)
- ジュラルミンよりも価格が高くなりやすい
- 耐食性が低いので経年劣化しやすい
何でもかんでも超々ジュラルミン使えば良いって訳ではないので、注意しましょう。
アルミ材の種類を覚える際の注意点
アルミの種別を語る際によく
「4桁の数字が高くなるにつれて強度が増す」
と勘違いされている方を稀に見かけます。
確かに下が1000番の強度が弱い純アルミで、上が7000番の超々ジュラルミンですから、ややこしいですよね…
数字は強度を示している訳でありませんので注意しましょう。
まとめ
アルミニウム合金と言って、アルミ以外に複数の金属を融合させることで、様々な特性を持ったアルミ材が生成されます。
アルミ材は私たちの生活に欠かせない機械材料に多く使用されているため、これからものづくりを始める方々はアルミの特性を理解しておきましょう。
別に種別ごとに特徴を丸暗記しろとは言いません。
「そういえばこんな材料あったな」
「このアルミ合金使えば重量と強度も安心できるかも!」
と知っていれば、材料選定における幅が広がるので、ぜひ知識として取り入れておきましょね。
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