機械を扱う製造業にとって欠かせないのは原材料の性質です。
装置の組み立て等に関わる製造業の皆さんは金属や樹脂の特徴を理解できていますか?
材質を理解しないまま組立や加工を進めてしまうと、思わぬトラブルを招きますよ。
今回は機械材料の基礎知識ついて半導体装置製造歴10年以上のゆとり課長が簡単にわかりやすく解説していきます。
機械の設計や組立を始めて間もない方はぜひ参考にしてくださいね!
機械材料とは
機械材料とはその名の通り、機械に組み込まれている材料(金属、プラスチックなど)の総称です。
身の回りにある機械ってどんな物があるでしょう。
- 車や飛行機などの乗り物
- クレーンや加工機などの産業用機械
- パソコンやタブレット端末などの情報通信機器
など様々なものが挙げられます。
これらの機械は、数種類の適切な材料が組み合わさって、形となり正常な機能を保っているのです。
材料選定の目的
普段何気なく使っている機械の材料を気にしたことはありますか?
一般ユーザーの方で機械を作る材料に対して気にする方は、あまりいないと思われます。
機械を見て、
「この部品に使われている材料ってなんだろう」
「なぜここの構造にこの材質が使われているのだろう」
そう感じる方は、ものづくりのセンスがアリかもしれませんね。
機械設計する上で、材料選定は非常に重要となってきますよ。なぜ重要なのか理由を大きく3つに分けて解説していきます。
材料選定の目的を知って、ものづくりに関する基礎知識をまずは深めていきましょう。
品質を保つ
まず最優先するのは、品質の維持です。
使用目的に適さない材料の強度であったり、耐熱性がなければ、製品として成り立ちません。
例えば、
- 屋外で使用する物に対して錆びや防水性が弱い材料を選定
- 仕様の耐荷重に耐えられない材料を選定
といったケースです。
ここを疎かにしてしまうと、最悪事故が発生し、ユーザーを巻き込むだけでなく、製造元はその責任を負うことになってしまうでしょう。
コストを抑える
設計者はコスト意識をもって材料選定する必要があります。
軽量かつ強度も高い材料ほど、価格もそれなりに高くなってきますよ。
また材料自体安くても、加工しにくかったり、製造工程で扱いずらい材料は、製造工数が増えてしまい、結果コストを上げてしまうでしょう。
会社のお金で作るからとは言え、最終的な利益に繋がらなければ意味がありません。
自作で何かものを作る時も一緒です。
仕様を十分に満たすのであれば、なるべく安い材料費に抑えたいですよね。
納期を守る
設計者や工場の資材部を悩ますのが納期です。
「安くて仕様も満たすし良いじゃんこれ!」
と思っても、いざ材料メーカーへ問い合わせると
「今原料の調達が不安定で納期回答だせないですよ」
「ああ、これなら3カ月後ですかね」
といった回答も、ものづくりの現場で働いていると結構あります。
納期の都合が合わない時は、手に入りやすい別の材料選定を検討する必要も出てくるでしょう。
機械材料の種類
材料選定の目的は理解できたでしょうか。
機械をつくる材料は、なんとなくで材料選定しているわけではないのです。
では、機械材料にはどんな種類があって、それぞれどんな特性があるのでしょうか。
学校等で扱っている工学系の教科書で勉強しようとすると、特性のところで難しい式だったり数字がでてきてイメージしにくいと思います。(まぁ大事ではあるんですけどね…)
ここでは、ものづくりの現場でよく使う機械材料を大まかにピックアップして、なるべく簡単に特性を解説していきますよ。
これから機械設計を勉強する方、ロボット製作に興味がある方はぜひ参考にしてくださいね。
鉄鋼
ざっくり言ってしまうと、金属の中で強度が高く重量もヘビー級が揃っています。
世界で使用されている金属材料のうち、重量換算で表すと9割以上が鉄鋼で占めていて、機械の軸やベースなど骨組み部分に使用されることが多いです。
鉄鋼材料は、価格の安い炭素鋼と高性能な合金鋼に分類されますよ。
聞き馴染みのあるステンレスは合金鋼の仲間であり、錆などにも強い人気の材料と言えるでしょう。
硬いので切断するときも火花が散りやすく、一般家庭で加工する際は注意が必要。
アルミニウム
金属の中でも比較的軽いため、重量が抑えられます。
アルミホイルとか1円玉のイメージが強く、他の金属と比べるとペラペラで強度が劣ってしまう感じがありますが、一概にそうとも言い切れません。
実はアルミニウムにも様々な種類が存在し、柔らかいものから硬いものまでピンキリです。
超々ジュラルミンという高級アルミの場合、軽い且つ鉄鋼に引けを取らない強度を誇るため、非常に優秀な機械材料と言えるでしょう。
ジュラルミンは航空機などにも使われていることで有名ですよ。
樹脂
共通した特徴は金属よりも圧倒的な軽さを誇ります。
その分、強度は金属より弱いものが多く、負荷が加わるとすぐ割れてしまう樹脂も多いです。
また熱に弱い樹脂は、ドリルで穴をあけても摩擦で溶けてそこまで加工精度が出せないこともしばしば。
プラスチックにも様々な種類が存在し、それぞれ特性が異なりますが、透明であるものは中身がのぞけるため、外側の保護カバーなどにも利用されることが多いでしょう。
また、
- カーボン樹脂
- FRP
と呼ばれる樹脂材は、強化プラスチックと呼ばれ、一般的なプラスチック材と比べて桁違いに優秀な強度を誇りますよ。
ただし加工が難しいため、コストがかかる点に注意しましょうね。
まとめ
機械を作る時は、構造や動作の仕組みを考えることも重要ですが、材料選定も非常に重要です。
目的の性能や仕様を十分に満たす材料選定はもちろんのこと、コストや材料調達も考慮した選定がエンジニアは必要となってきますよ。
「材料力学の教科書みても複雑な強度計算ばかりで結局なに使っていいかよくわからないんだよな」
機械設計はじめて間もない学生や社会人は材料選定に悩むでしょう。
難しい計算などはおいといて、初めは何とくメインで使用する材料の特性を理解しておきましょう。
実際に自分で加工したり、触ってみたりすると、さらにイメージがしやすいですよ。
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