トヨタ生産方式のジャストインタイムを取り入れようとすると、必ず出てくるのがかんばん方式です。
かんばん方式をそのまま導入しようとしていませんか?
事前にメリットとデメリットを理解しておかないとトラブルにつながりますよ。
今回は生産管理でよく参考にされる「かんばん方式」ついて半導体装置製造歴10年以上のゆとり課長が簡単にわかりやすく解説していきます。
本記事を読んで、かんばん方式の失敗するリスクを抑えましょう!
かんばんとは
かんばんとは、トヨタ生産方式の一つであるジャストインタイムを実現するために取り入れた、生産状況を前後の工程間で共有し、次工程で必要な部品数をタイムリーに管理流通させるためのツールです。
「かんばん」は漢字で書く「看板」のことで、ラミネート加工された札などに部品名と数量を記載して運用する工場が多いです。
※「カンバン」とカタカナで表記されることが多いですが、発明者であるトヨタ自動車は「かんばん」とひらがなで紹介しています。
大まかな流れとしては、
- 後工程の在庫枠が空いたら、前工程に対し空いた分のかんばんを渡し補充を知らせる
- 前工程は受け取ったかんばんの分だけ物を用意して、後工程へかんばんと一緒に物を渡す
基本これらの繰り返しで、生産管理していきますよ。
アナログかつシンプルさが特徴の生産管理と言えるでしょう。
かんばんの種類
かんばんの最低限の役割は
「物作って在庫を補充してください」
と前工程へ伝えわればOKです。
なので、紙にこだわる必要はなく、モニターなどを使用して電子かんばん運用する工場もありますよ。
また、
- どの製品を生産するか指示を出す「仕掛けかんばん」
- どの製品を引き取るか指示する「引取りかんばん」
- 計画外の制作指示をする「臨時かんばん」
などに使い分けてかんばん運用をする工場もあります。
最初から細かくかんばんの種類を分けすぎると、現場の従業員が追いつかない恐れがあるため、おすすめできません。
メリット
「かんばん運用すると何がいいの?」
「メリットを知っておけば自社工場の悩みも解決できるかも!」
トヨタ工場が取り入れる有名なかんばん運用は、何がすごいのか気になりますよね。
ここではかんばん運用におけるメリットを2つ紹介していきます。
まずはメリットを知って、かんばんがどんな効果をもたらすのか理解していきましょう。
余計な在庫を抱えない
外したかんばんの分だけ生産するので、用意したかんばん以上の在庫は基本的に作りません。
「なくなったら補充する」の繰り返しなので、安定した生産数を維持できます。
例えば、
- 部品や仕掛品が入りきらず工場内のスペースが圧迫
- ロット不良が発覚し大量在庫の見直しが必要になった
- 売れないまま保証期限が過ぎてしまった
といった現場の悩みにもしっかり効果を発揮するでしょう。
情報の共有がしやすい
「なにをいつまでに何個作るのか」がかんばんに明記されているので、現場にいれば情報は誰でも把握できます。
かんばんに必要な情報が明記されていれば、それを見て作業者は動けば良いのです。
つまり、現場でパソコンをひらいたり帳票類を発行する事務工数の削減が期待できるでしょう。
デメリット
かんばん運用のメリットを理解できましたか?
シンプルでアナログな運用方法でありながらも、工場に絶大な効果を生み出してくれそうですよね。
早速導入を検討したいところです。
ですが、ちょっと待ってください!
実はデメリットもいくつか存在します。
ここからはかんばん運用におけるデメリットを3つ紹介していきますよ。
デメリットもしっかり理解していきましょう。
在庫欠品リスク
必要最低限の在庫しか持たないということは、なにかしらのイレギュラーが発生した際に迅速な処置ができなくなってしまいます。
例えば以下のようなケースに悩まされるでしょう。
- 突発的な大口受注に対応できない
- 工程内不良が発生すると在庫補充が遅れる
もちろんお客さんに対して
「うちの工場はかんばん方式で生産してるから納期遅れるかもしれません」
なんて言い訳は通用しないのです。
かんばんの紛失
かんばんのやりとりで生産するということは、かんばんが減るとその分在庫も減ってしまいます。
例えば、
- 風でかんばんが飛ばされてしまった
- 誰かがかんばんを持っていったきり戻ってこない
といったように何かの拍子でかんばんが減り、そのまま気づかず運用し続けてしまうと、
「あれ、あるはずの在庫なくね?」
となり、工場としてはパニックに陥ってしまうでしょう。
現場の負担
かんばん運用はシンプルですが、現場のみんなが創意工夫してルールを守っていかなければ成功しません。
- かんばんの管理を徹底
- 工程内で不具合が発生しないような体制を考える
- 在庫が不足すると製造現場や下請けがめちゃくちゃ煽られる
といったように、現場の負担は避けられません。
外からは簡単そうに思えるかんばん運用も、やる立場になると結構大変なんです。
注意事項
メリットとデメリットを紹介していきましたが、いかがだったでしょうか。
メリットだけではなくデメリットも理解しておかないと、後々痛い目にあってしまいますよ。
他にもかんばん運用する上で、気をつけておかないといけない点があります。
私の体験談踏まえて紹介していきますので、ぜひ参考にしてくだいね。
「トヨタがやってるから真似しよう」は危険
かんばん運用は、あくまでジャスト・イン・タイムを実現するための運用手段となります。
かんばんだけ真似ても現場に負担がかかるだけなので、注意しましょう。
何でもトヨタ工場の生産方式を真似したがる方っていますよね。
参考にするのは良いことですが、目的と手段をはっきり区別してください。
各々の工場で作るものや生産方式は異なります。
そこがマッチしていなければ、手段が目的化してしまうのです。
ニセかんばん事件
かんばん運用する前に、まず工場全体のものの流れを作っていきましょう。
そしてかんばん運用する目的とルールをしっかり現場へ伝えてください。
私のいる工場では昔、トヨタ生産方式を理解しないまま無理やりかんばん運用を始めてしまいました。その結果、現場の人間自らが内緒でニセかんばんを発行してることが発覚しました。
なぜ勝手にかんばんの枚数を増やしたが当事者に聞くと、
「作っておかないと何かあった時に結局我々が苦労するので、すぐに補充できるようになるべくストックを持っておきたい」
という理由でした。
在庫を必要最小限に抑えるのが目的なのに、これでは意味がありませんよね。
かんばんの管理者は適切な枚数を発行するとともに、現場の意見もしっかり吸い上げて負担をなくす必要がありますよ。
まとめ
かんばん運用はジャストインタイムを成し遂げる一つの手段です。
「かんばん運用やれって上司から言われたからやらないとな…」
そんな悩みを抱える製造社員は少なくないでしょう。
今回紹介した内容を理解しないと、せっかくのかんばん運用もただつけるのが目的となってしまい、真の成果に繋がりません。
やるからにはしっかり勉強して、周りとも相談しながら運用ルールや仕組みを考えていきましょう!
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