みなさんの職場でQCサークル活動(小集団活動)はやっていますか?
通常業務で忙しい中メンバーと打合せしたり、発表会に向けて資料を作成したりと大変ですよね。
それなりに自信をもって取り組んだ活動テーマでも、発表会で審査員にウケないと評価されません。
私の工場のQCサークル活動は、改善活動の中身よりも、発表会に向けた後付けQCストーリーをいかに違和感なく作り上げるかがメインになっています。
「こんな茶番イベント、早く廃止にするべきでは…?」
そこで今回はQCサークル活動がくだらないと言われる理由と進め方の改善策について、工場勤務歴10年以上のゆとり課長が考察してみました。
QCサークル活動を今後も続けるために、今一度QCサークル活動の進め方を見直すきっかけになれば幸いです。
QCサークル活動とは
QCサークル活動とは、同じ職場内の日常管理業務を自発的に改善する小グループの活動を指します。
自発的とは上司からあれこれ催促されなくても、チームのメンバーが主体となって改善活動を進めていく意味です。
メンバーはだいたい10人以下で構成され、役職問わず誰でもリーダーになれます。
QCサークル活動と聞くと、品質に関わるテーマしか選定できないイメージありますが、そんな縛りはありません。
QC手法を活用すれば基本的にテーマは何でも良いので、品質と関わりがないような事務系の職場でも普通に参加できますよ。
QCサークル活動の目的
私の工場のQCサークル活動の目的は以下の3つです。
- 企業の体質改善・発展の寄与(会社のため)
- 相互啓発(仲間のため)
- 自己啓発(自分のため)
QCサークル活動を通して、自分自身の知識技能を高め、よりよい仕事に繋げていきます。
また、自分たちの活動のみならず、発表会を通じて他のサークルの活動テーマも参考にすることで、参加者同士の相互啓発が期待できますよね。
最初はくだらないと思うかもしれませんが、推進する運営側と参加者の両者がこの目的を理解した状態で取り組まないと、QCサークル活動の継続は難しくなるでしょう。
よくあるQCサークル活動の進め方
ほとんどの会社で、QCサークル活動は次のような進め方をするように指導されるでしょう。
- テーマ選定
- 現状把握
- 目標設定
- 活動計画
- 原因の究明
- 対策立案
- 対策実施
- 効果の確認
- 標準化・歯止め
いわゆる、QCストーリーです。
各サークルはQCストーリーに沿った内容で資料を作成させて発表し、審査員は発表内容と活動報告書を見て採点をしていきます。
QCストーリーに沿った活動であったかどうかは採点者にとってかなり重要なポイントであり、これに従わないと減点されてしまったり、発表会の質疑応答で審査員から厳しく問い詰められたりします。
実際に私の工場でも、QCストーリーの項目ごとに内容を採点していく方式であるため、どれか一つでも抜けてしまうと、その項目は0点と評価されてしまい、上位入賞は絶望的になってしまいますよ。
QCサークル活動がくだらないと感じてしまう理由
「QCサークル活動なんて時代遅れ!早く廃止になってくれないかな…」
「こんなくだらないイベント最初に考えたやつ誰だよ!」
このように、現状のQCサークル活動に対して不満を持つ従業員は私の工場にもたくさんいます。
なぜ、QCサークル活動がくだらないと感じてしまう人が続出しているのでしょうか。
ここからは、QCサークル活動がくだらないと感じてしまう理由についていくつか挙げていきますね。
実際にQCサークル活動をやる側の立場になって考えてみましょう。
QCストーリーの縛り
発表会のために、話し合ってもいない内容を後付けして資料を作った経験はありませんか?
私のQCサークル活動も毎回そうでしたが、最初から最後までQCストーリーの順に活動できたサークルはおそらく少ないと思われます。
なぜなら、正直にQCストーリーの順番で進めていくと、いくつかの問題にぶち当たるからです。
QCストーリーで進める上で難しいと思われる理由を3つ挙げてみました。
失敗できない
チーム内でテーマ選定をして、
「じゃあ、今回はこのテーマで活動を進めていこう!」
と決めました。
QCストーリーに沿ってしばらく活動を進めていった結果、
- いろいろ試したが思うような効果が得られなかった
- そもそも自部門だけでは解決できないレベルの問題だった
という状況に陥った時、皆さんはどうしますか?
発表会で「問題解決できませんでした」と終わるQCサークル活動は見たことありません。
つまり、1つのテーマ選定に絞ってQCストーリーを進めると失敗できないのです。
失敗できないので、残念な結果に終わってしまったチームは、言葉匠みに話を盛ったり、都合の悪いデータは見せなかったりと、あたかも上手くいったような嘘の報告をでっち上げます。
目標設定は難しい
目標設定は数値化した方が良いと教えられますが、手段もまだ確立していない段階で目標設定するのは、なかなかの度胸が試されます。
例えば、○%のコスト削減と目標設定を立てても、何を根拠にでてきた数字かを問われると、現状把握した直後の段階では、
「何となくそうしたいと思ったから」
と答える人がほとんどでしょう。
やったことのない未知なる改善テーマに対して、QCストーリーの順番で目標設定しても、だいたいがメンバーの願望になってしまい、期間内に達成可能なレベルの目標設定なのかどうか正直わかりません。
なので、結果ありきで後から目標を立てて、効果の確認の際に「目標達成しました」という茶番劇にするチームがほとんどです。
活動計画通りにできない
半年間みっちり計画を組んで充実した活動計画にしないと、上司や審査員が満足しません。
なので、一応それっぽい計画は立てるものの、計画通りにQCストーリーが進まないチームがほとんどだと思います。
なぜならQC活動は結果を見ながら本業の合間を見てやるテーマがほとんどで、活動計画を作成しても守りようがないからです。
例えば対策立案をして実施した後、思うような結果が得られなかったら当初立案した計画はすぐに崩れてしまいますよね。
もし計画を立てるとしたら、
「来週の打ち合わせ時に、これをやっておきましょう」
程度ではないでしょうか。
発表会の審査が会社の幹部クラス
発表後に審査員から評価コメントをもらって、どこのQCサークル活動が優秀だったのかを決めるのですが、順位に納得いかなかった経験をもつ参加者も多いのでしょう。
QCサークル活動がくだらないと感じてしまう理由の一つに会社の幹部クラスが審査員をしていることが挙げられます。
なぜ幹部クラスが審査員だとくだらないのでしょうか。
理由を二つ挙げてみました。
現場のウソを見破れない
幹部クラスのお偉いさんは、日ごろ会議室や事務室にいることがほとんどであり、工場の製造現場にいる時間はそんなにありません。
また、審査員の中には、会社の顧問や社外のゲストが呼ばれる場合もあります。
つまり、現場の実態を知っている人が審査をしていないため、発表内容の違和感に気づけません。
嘘の報告を嘘だと見抜けないまま、褒めて評価してしまうと、真面目に取り組んだ人ほどくだらないと感じてしまうのです。
- 良い報告だけを必死に取り上げる発表者
- お花畑に囲まれた審査員
- 外から冷めきった顔で傍聴する他の参加者
このように発表会の会場全体が異様な空気に包まれるでしょう。
金額効果の高いチームを評価する
幹部クラスの中でも、QCサークル活動をしたことがない素人レベル同等の方が審査する訳です。
どんな点を評価して良いのかわからず、いかに会社に貢献した内容だったか重視で評価をするでしょう。
参加者の職場内で十分な結果が得られたり、他チームからも参考になるようなQCサークル活動であったりしても、金額効果が期待できないテーマは上位に入れません。
「いや、そのテーマはもう日常管理レベルの枠を超えてるから!」
「改善の立案や実施は専門部署に任せて自分たちはテーマ選定と結果報告だけ…」
このような活動内容でも、結果的に金額効果が高ければ会社としてはうれしいので、高評価につながってしまい、小集団活動へ参加する従業員のモチベーションが下がります。
新人にすべてを押し付ける
他にもQCサークル活動がくだらないと感じてしまう理由に、テーマ選定から発表資料の作成までを新人にすべて押し付けてしまうことが挙げられます。
「新人教育の一環だから」
「中堅以上は本業で忙しいから」
などの理由で、QCサークル活動のリーダーは暇な新人がやるべきみたいな風潮が残っている職場はありませんか?
自発性の意味をはき違えて、指導もなしに最初から最後までを全て新人にまる投げしてしまうと、当然やる側はストレスに感じてしまうでしょう。
QCサークル活動の目的や進め方を理解していない無能な上司がいる職場で発生しやすいです。
指導すると言ってもせいぜい発表用パワーポイントの文字サイズや色のことしか提言してきません。
QCサークル活動を上手く進めるコツ
「くだらないと感じてしまう小集団活動から脱却するためには…」
「QCサークル活動の進め方を見直したい!」
QCサークル活動をもっと上手く進める方法はないのか気になりますよね。
ここからは、QCサークル活動を上手く進めるために見直すポイントを4つ紹介していきます。
QCサークル活動の進め方を見直して、つきたくもない嘘と茶番劇を考える無駄な時間をなくしていきましょう!
重いテーマは避ける
QCサークル活動におけるテーマ選定は日常業務をこなしていく中で、改善の余地がありそうなテーマを探していきましょう。
お偉いさんに評価されたいがために、重たいテーマを選定してしまうと、失敗した時点で嘘の報告をするしかなくなります。
失敗しても、
「上手くいかなかったね、一旦従来のやり方に戻そうか」
程度のテーマを選定して、新規開発に関わるテーマや自部門で解決できないようなテーマは、小集団活動で取り上げずにトップへ任せてしまえば良いのです。
複数のテーマをストックする
QCサークル活動におけるテーマは発表するテーマを一つ絞れば良いだけで、活動自体は複数やっても問題ありません。
テーマを一つ決めたものの、メンバー全員でやるほどのことではなく、一部のメンバーがニート状態になっていませんか?
余ったメンバーで他の改善テーマも並行に取り組み、ネタをストックしておきます。
今回発表会で使われなくても、次回以降のテーマ選定候補になるため決して無駄になりませんよ。
改善ネタを温めておけば、発表会直前になってバタバタするのもなくなるでしょう。
メンバー
そもそもQCサークル活動の小グループの形成や参加は自主的だったはず…
自主的参加で良いのであれば、テーマに合わせて都合の良いメンバーで固めていきましょう。
やる気のない人やテーマに対して反対意見をもった人がメンバーにいると、話が進まずただ邪魔です。
また、会社から全員参加だと言われるのであれば、現場の若手や中堅だけでなく、役職ついた上司も積極的に参加しないとダメです。
リーダーを若手にやらせるのは構いませんが、全員参加だとトップから言われている以上は、ベテラン従業員や上司のフォローがとても重要になるでしょう。
CAPDで進める
失敗できないような超重要案件のテーマでない限り、QCストーリーに沿って慎重に進める必要はありません。
日常業務の改善がテーマなら、QC7つ道具を使わずとも現場目線で、
「こうすれば良くなるかも…」
という改善案を予めもつ方々が実際ほとんどです。
失敗を恐れずに、疑わしき要因があればさっさとそこに着目して改善案を実施していきましょう。
効果の確認をして不十分であれば次の対策案を考え実施…
このようにCAPDを繰り返す対策先行型の進め方の方が、嘘っぽくなくリアルに基づくのではないでしょうか。
いろいろ試してダメだったらQC7つ道具を使って問題を整理していく進め方をおすすめします。
まとめ
昔からの惰性でやらせるQCサークル活動は、今や発表会に向けて嘘偽りのQCストーリーを考えることがメインになってしまい、本来の目的からだいぶ離れてしまっています。
QCサークル活動を社内イベントとして維持させたいのであれば、これらの問題に会社の上層部や運営側が早く気づくことです。
QCストーリーは失敗できない時の重たいテーマ向きで、とりあえず試してを繰り返す日常業務の改善活動の進め方として現実的ではありません。
QC手法を活用する小集団活動は良いとして、QCストーリー通りに沿った発表じゃないとダメ見たいな風潮はそろそろなくした方が良いと私は思います。
会社側が全員参加とか言っている以上、業務の一環なのだから、もう少し組織全体でQCサークル活動の進め方を見直すべきですね。
参加者に時代遅れだとかくだらないとか思われてしまわないように、みんなで工夫していきましょう。
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