「プラスドライバーなんて一本あれば十分!」
なんて思っていませんか?
普段から工具を使わないのであれば特に問題ではありませんが、機械製造業のエンジニアであれば、技術・技能のみならず、もう少し工具にこだわりを持つべきです。
プラスドライバーと言ってもいろんな種類があり、それぞれの作業に適したプラスドライバーを選ぶことで作業性がだいぶ変わりますよ。
今回はプラスドライバーの種類と選び方について、現役機械製造職のゆとり課長が簡単に解説していきます。
プラスドライバーの種類を把握して、作業に適した工具を使い分けられるエンジニアになりましょう!
プラスドライバーの選び方
「プラスドライバーの選び方で気を付けることって何?」
「プラスのネジが回せれば何でも良いのでは?」
プラスドライバーを買うにしても、工具のカタログにはいろんなラインナップあって、知識がないと何を選んで良いかわかりませんよね。
もちろん適当に選んでしまうと、まったく使い物にならず無駄な買い物で終わってしまいますよ。
まずは、プラスドライバーを選ぶ前に必ずチェックしておきたいポイントを4つ紹介していきます。
それぞれの違いや見方知って、適切なプラスドライバーを選べるようになりましょう。
ビットのサイズ
プラスドライバーの先端(ビット)にはサイズが存在します。
回すネジの十字溝の大きさと一致しなければ、ネジの頭がなめてしまったり、そもそもはまらなかったりと、ネジ締めのトラブルに繋がるでしょう。
プラスドラバーのビットのサイズは0番~4番まで存在しており、数字が大きいほど十字穴も大きくなりますよ。
プラスのねじとビットサイズの対応表は以下の通りです。
※なべ小ねじ、さら小ねじ、丸さら小ねじ、丸小ねじ、バインド小ねじ
ネジの呼び | 十字穴の番号 | 備考 |
M1.6、M2 | #0(S-0) | |
M2、(M2.2)、M2.5、M3 | #1(H-1) | M3はバインド小ねじのみ M2はISOに適合しない |
M3、(M3.5)、M4、(M4.5)、M5 | #2(H-2) | |
M6 | #3(H-3) | |
M8、M10 | #4(H-4) |
個人的に1番と2番のサイズは使う頻度が高く、次に0番以下の精密サイズを使いますね。
ビットサイズが#0~#2のプラスドライバーは最初から揃えておいても損はないでしょう。
規格
同じ十字穴でもプラスネジには種類があって、
- フィリップス(Ph)
- JIS
- ポジドライブ(Pz)
の3種類が存在します。
フィリップス(Ph)とJIS規格のプラスねじにおいては、若干の違いはありますが共通のプラスドライバーでも特に問題ありません。
日本ではあまり馴染みがありませんが、ヨーロッパ主流のポジドライブ型のネジを締める時は、専用のポジドライブドライバーを使わないと上手くかみ合わないケースがでてくるでしょう。
したがって、プラスドライバーを選ぶときはフィリップス型(Ph)かポジドライブ型(Pz)かをよく確認しておく必要がありますよ。
用途や作業頻度を考える
プラスドライバーの選び方として考えておきたいのは、プラスドライバーを使う用途や頻度です。
例えば、
- ネジを締めるではなく外す用途がメイン
- たくさんネジを締めるので楽にネジを回したい
- 機械油などで汚れる環境で使う
- 正確なトルクできっちりネジ締めしたい
など、使用する目的が明確になっているならそれに特化したプラスドライバーを選ぶことで作業性は格段に良くなります。
仕事で使うなら自分が担当する作業などを考慮して選びましょう。
形状や長さ
形状や長さにおいても、何でも良いとは限りません。
- グリップの形状が手に馴染みやすい
- 狭い隙間でもネジ締めできるコンパクト性
- 手が届かないような深い場所でもネジ締めできる長軸タイプ
など、プラスドライバーの形状や長さは作業環境によっても有効性が左右されます。
JIS規格によって番手別にプラスドライバーの長さは決まっていますが、各工具メーカーはわりと自由な長さを販売されています。
「JIS規格から外れた長さのプラスドライバーはおすすめできない」
とかそんなルールはないので、使いやすい長さで選別しましょう。
【用途別】プラスドライバーの種類
「どんな種類のプラスドライバーがあるのか知りたい!
「製造部門で揃えておきたいおすすめのプラスドライバーは?」
これから工具を揃えようとしている新人作業者の方は、どんな種類のプラスドライバーを買えば良いのか気になりますよね。
ここからは、私が所持している代表的なプラスドライバーのラインナップを紹介していきます。
必須のプラスドライバーから、あったら便利なおすすめプラスドライバーの種類までを挙げるので、それぞれのメリットやデメリットを知っておきましょう。
ボールグリップドライバー

ボールグリップドライバーは、グリップ部分が球状になっているため、手のひらにフィットしやすい構造です。
力が入りやすいし、軽くて回しやすいため、ボールグリップドライバーは手作業でプラスネジ締めるときの基本ドライバーとなります。
ベッセルのボールグリップドライバーはラバー状の材質で、滑り止め効果もあり使いやすいですが、手汗などでグリップ部分の劣化が激しいです。
そのため、人によってはビット先端よりもグリップが先に消耗するかもしれません。
貫通ドライバー

貫通ドライバー(別名:タッピングドライバー)はグリップエンドがビットの軸と一体化しているため、ハンマーなどで叩ける構造になっています。
ネジを叩いて押し込む力を加えながら回せるため、なめたネジでも、貫通ドライバーをガツガツ叩いてネジ溝を強制的に作り直せば、外しやすくなりますよ。
一般的なプラスドライバーなどと比較すると、持ち手が重く扱いにくいため、量産の組立にはおすすめできません。
組立に使うよりかは、錆びたネジや固着してしまったネジを外す分解用途で使いやすいプラスドライバーと言えるでしょう。
精密ドライバー

精密ドライバーは十字溝のサイズが0番以下の小さなプラスネジの締結・分解に使用します。
精密ネジ(マイクロネジ)は身近なものですと、腕時計や携帯ゲーム機、眼鏡によく使われていますね。
携帯サイズの製品は0番よりもさらに小さい00番、000番の精密ネジも流通しているため、エンジニアの皆様は、精密プラスドライバーの中でも各種サイズあること理解しておきましょう。
精密ドライバーはコンパクトサイズで、握るというよりはつまんで回すような工具が多く、トルクが出しづらいです。
ネジロック等で固着している精密ネジを外すときは、持ち手が太く、グリップ性に優れた精密ドライバーがおすすめですよ。
スタビードライバー

スタビードライバーは持ち手が短く、狭い場所でのネジ締めに特化したプラスドライバーです。
通常のドライバーだと持ち手が筐体と当たってしまい、
「なんでこんな工具が入らないような場所にネジ穴開けたんだよ…」
といった残念な設計に対しても、スタビードライバーは有効な工具になるでしょう。
スタビードライバーの大きさは非常にコンパクトであるため、携帯性にも優れていて便利ですが、
- トルクが出しにくい
- 片手のみで回すため早回しができない
などのデメリットがあるため、仕事で使うメインのプラスドライバーとしてはおすすめしません。
もしもの時に対応できるよう、1本は持っておくと安心でしょう。
ラチェット式ドライバー

ラチェット式ドライバーは、その名の通りラチェット機構が備えられているため、片手でもネジの早回しが可能です。
持ち手を変えることなく、手首を繰り返しひねる動作でネジが回るため、作業効率とネジ締め作業者の軽減に期待ができるでしょう。
写真のラチェット式ドライバーのように、先端のビットが交換できるタイプが多いため、様々なネジに対して万能的に使用できます。
また、コンパクトなサイズのラチェット式ドライバーを選べば、スタビードライバーの欠点である作業性の悪さも補ってくれますよ。
電動インパクトドライバー

電動インパクトドライバーは高トルクでネジを締めてくれる自動ハンドツールです
ネジを打ち込む力が強いので、壁に打ち込むような木ねじやタッピングビスなども電動インパクトドライバーであれば、楽に締結できます。
種類によっては先端のビットをドリルに付け替えることで、穴をあける用途にも使用でき、建築やDIYのシーンにおいて非常に重宝される電動工具となるでしょう。
電動ボールグリップドライバー

電動コンパクトドライバー(電動ボールグリップドライバー)は、気軽に使える電動工具として近年販売され、ものづくり界隈において非常に人気です。
電動で回すだけでなく手動(手締め)でも使えるし、価格も3000~5000円程度と安価であるため、
「電動工具ってちょっと価格が高いよな…」
「電動工具はゆとり、男は黙って手締め」
といった電動工具に対しての悩みや先入観をもった方にもおすすめできるプラスドライバーと言えるでしょう。
充電はUSB Type-Cがほとんどで、携帯性にも優れているため出張先でも活躍しますよ。
トルクドライバー

精密機械・車両のエンジン回りなど、精度や安全性が問われる大事な部品のネジ締めに使用するプラスドライバーです。
持ち手のダイヤルを回し指定トルク値を設定することで、作業者が誰であろうと均一したトルクでネジ締めできます。
ただし、精密なつくりであるが故に持ち方や保管方法を誤ると精度が悪くなってしまうため、慎重に扱う必要がありますよ。
価格もそれなりに高く、トルク値の設定範囲も様々なので、使用目的をはっきりさせてから購入するようにしましょう。
まとめ
プラスドライバーの種類について紹介していきました。
使用するネジは同じでも作業用途別に適したプラスドライバーを使い分けることで、作業効率の向上と品質維持に繋げられます。
また、工具にこだわりを持つことで、ものづくり(特に製造職)に対してのモチーベションをあげるきっかけにもなるでしょう。
新人機械エンジニアのみなさんもこの機会に、様々な工具のメリットやデメリットを理解して、自分の作業環境に適した工具を揃えていきましょう。
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