エアーコンプレッサーや配管などの空圧機器の組立で頻繁に使うのがシールテープです。
みなさんは、シールテープの正しい巻き方をご存知でしょうか。
シールテープの巻き方が悪いとシール性が低下し、液体や空気が漏れるといったトラブルにつながります。
今回はシールテープの正しい巻き方について、工場勤務10年以上のゆとり課長が簡単にわかりやすく教育資料をまとめてみました。
空圧機器組立の基本であるため、製造初心者や今まで自己流でやられた方もぜひチェックしておきましょう。
シールテープとは

シールテープは液体や気体を通す配管のねじ山に巻き、接合部の隙間を埋める用途に使われますよ。
配管のねじ山がかみ合って見た感じしっかり接続ができても、接合部にはわずかな隙間が生じてしまいます。
わずかな隙間でも粘度が低いサラサラした流体にとっては容易に通過してしまい、ガス漏れや水漏れといった配管トラブルを招いてしまうでしょう。
そのためメーカーの作業者は、漏れがないように正しくシールテープを巻いてネジ山間の隙間をしっかり塞がなくてはなりません。
空圧機器において流体が漏れる現象を工場勤務界隈では「リーク」と言いますね。
また配管接続ネジのタイプは大きく分けて2つ、管用テーパねじと管用平行ねじがありますが、接合部のシール方法は以下のように使い分けるのが一般的です。
- 管用テーパねじはシールテープを巻く
- 管用平行ねじはシールテープを巻かずにOリングやパッキンを挟む
これらのシールテープの使い分けは覚えておいてくださいね。
シールテープの巻き方
「シールテープを何回巻き直しても漏れる…」
「シールテープの巻き数が少ないって現場から注意された…」
シールテープの巻き方って単純で簡単そうに見えますが、意外とコツがあったり、人によって言うことが変わったりするので、何が正しいやり方なのか迷ってしまいますね。
ここでは、空気圧装置組立ての技能ルールに沿って、シールテープの正しい巻き方について紹介していきますよ。
シールテープの巻き方について正しく理解し、安全で確実な配管作業ができるようになりましょう。
シールテープ幅の選定
シールテープの幅に関して、
「このサイズのねじにはこの幅のシールテープを巻く」
みたいな共通ルールは厳密に決まっていませんが、管用ねじを締めこんだ時にネジ山がかみ合う部分の幅は確保しておきましょう。
シールテープの幅が狭いと、ねじ山の接触面が少なくなり、十分に隙間を埋めることができません。
だからと言って、ねじ山が全て隠れるくらいの十分すぎるシールテープ幅を選定してしまうと、
- もったいない
- 見た目が悪い
という理由で、製造界隈の方から嫌われる風潮がありますね。
なので、製造現場の作業者が選び方で悩まないように、私の工場では以下の対応表を参考にしています。
ネジの呼び(管用テーパおねじ) | シールテープ幅(mm) |
R3/4 R1/2 | 13 |
R1/4 R3/8 | 8 |
R1/8 | 6 |
選び方の目安ですが、テーパねじ山に対して約2/3程度まで隠れるシールテープの幅があれば十分です。
まれに絶妙な幅が必要だったり、13mmしか手持ちになかったりした場合、ゆっくりカッターの刃で円周方向に沿って切断し、適切な長さに調整をしてください。
ねじ山の汚れ除去
シールテープを巻く前に、ねじ山に付着した油分や金属粉を取り除きましょう。
シールテープはねじ山と密着することで、ねじ山間のすき間を埋めシール性を高めますが、細かな異物が入ってしまうと密着性が弱まり、漏れやすくなってしまいます。
確実にリークさせないためには、エタノールなどの洗浄液とウエスをつかって、ネジ山部分の拭いてください。
新品の部品でも、防錆材がコーティングされている場合もあるので、しっかり落としてくださいね。
シールテープを巻く向き

シールテープを巻く向きはネジの回転方向に合わせて巻いていきましょう。
基本的には右ねじを扱うケースがほとんどなので、ねじ山正面から見て右周り(時計まわり)の方向にシールテープを巻いてください。
逆向きで巻いてしまうと締結時にシールテープがめくれて本来の密着性が弱まり、漏れの原因になります。
逆巻きでも意外と漏れない場合がありますが、シールテープを巻く方向は配管作業における超基礎的なポイントなので、絶対に間違わないようにしてくてださいね。
シールテープを巻く位置

シールテープを巻く方向は知っていても、巻き始める位置について知らない方が多いので、こちらも注意が必要です。
シールテープは必ずねじ山を1山程残した位置から巻き始めてください。
何山間隔をあけるか細かく気にする方いますが、ここではネジ山先端までシールテープが覆われていなことが重要となります。
ねじ山にかかっていない先端部分のシールテープは、締めこんだ時に配管内の液剤や気体に触れてしまったり、ちぎれたカスが落ちて配管内に混入したりと、機器の目詰まりの原因をつくってしまうでしょう。
シールテープの巻き数

先端1山分あけたところからネジの回転方向にシールテープを引っ張りながら巻いていきますが、ここでみなさんを悩ませるのが、シールテープの巻き数です。
シールテープの巻き数も「何周巻けば漏れない」というデータが特にありません。
巻き数が決められない理由は部品の出来栄え精度の公差、使用するシールテープの厚みなどで変わるからです。
そうなると、
「巻き数よくわからないから、多めに巻いておこう」
という思考になりがちですが、シールテープを巻きすぎてもねじ山へ食い込まず良くないというのが、作業者をさらに悩ませてしまうでしょう。
私の工場の場合、シールテープを巻く回数は2.5~3周を目安で巻くようにしています。
2.5~3周程度巻いてリークしたら、少しずつ巻き数を増やして様子を見ていく方法です。
ネットで調べると、水道管整備の業者等は10周以上巻いたりするようですね。
目安で定めた巻き数をきっちり守れば良いのではなく、シールテープがねじ山にしっかり食い込み漏れがなくなるまで巻き数を調整するのがなかなか苦戦するポイントとなるでしょう。
シールテープを馴染ませる

シールテープが巻き終わったら、指で切断したい個所を抑えて引きちぎります。
引きちぎった切れ端部分が残るので、切断後は指で軽くねじ山に沿ってシールテープを押さえ込み、馴染ませていきましょう。
爪などで強く押し込んでしまうと、せっかく巻いたシールテープが裂けてしまい、密着性に欠けてしまうので、ほどほどにしてください。
注意点
シールテープの巻き方について解説していきましたが、理解できましたか?
この他にも補足で注意すべきポイントが3つありますので紹介していきます。
注意点を知って、あらゆる環境下でも正しい配管接続ができるようになりましょう。
一回でも緩めたらシール性低下
シールテープを巻いた配管や継手類を締めこんだ際に、一度でも緩める方向に回してしまうと、シール性がなくなってしまうためNG行為となります。
仮にちょっとでも緩める方向に回してしまったら、おとなしく部品を外して、シールテープを巻き直してください。
継手の取り付け位置が決まっている場合は、ねじを締める方向のみでゆっくり位置決めしていきましょう。
やり直す場合はシールテープを綺麗に除去する
一度締めた後に外すと、配管のねじ山に以前のシールテープがこびりつきます。
巻きなおす場合は、おねじ側とめねじ側の両方ともピンセットなどを使って残ったシールテープを綺麗に取り除きましょう。
先がとがったピンセットで強く削ってしまうとねじ山を傷つけてしまう可能性があるため注意です。
また、めねじ側を掃除するときは、部品内部にシールテープのカスが入り込まないように慎重に取り除いてください。
ねじ山で指切りやすい
アルミやステンレスなどの金属のできたねじ山は鋭利で危険です。
ねじ山を手で回しながら掃除したりシールテープを馴染ませたりしていると、いつの間にか指が切れてしまうことがあるので、注意してください。
細かい部品を扱わない限りは、手袋などの着用をおすすめします。
まとめ

シールテープの巻き方で絶対に守ってほしいルールは以下の2点です(これテストにでます)。
- シールテープを巻く向きはネジの回転方向に合わせる(普通はネジ山側正面から見て右回り)
- ネジ山先端1~2山程度の間隔をあけた位置からシールテープを巻き始める
シールテープの巻き数は明確に決まっておらず、巻く回数が少ないと漏れやすいし、巻きすぎても逆効果であるため調整が難しい。
巻き数の参考として、2.5周で漏れないのが理想であるがねじ山の精度によっては10周以上巻く場合もありえます。
シールテープを綺麗に巻くコツとしては、軽く引っ張りながら巻いていき、切断後は指で軽く押してネジ山へ馴染ませてください。
空圧機器における接合部からの漏れは重大な事故につながる危険性があるため、作業者は正しい知識と技能を習得し、確実に作業を進めていきましょう。
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