生産管理していると、一度は「ジャストインタイム」という言葉を耳にするのではないでしょうか。
ジャストインタイムは製造業界においてとても有名な生産方式です。
一体何がそんなにすごいのか、気になりますよね!
工場勤務の人であれば、ぜひ知っておきたいところ…
今回は工場の生産方式の基礎であるジャスト・イン・タイムについて半導体装置製造歴10年以上のゆとり課長が簡単にわかりやすく解説していきます。
本記事を読めば、ジャストインタイムとはなにかを簡単に理解できますよ!
ジャストインタイムとは

ジャスト・イン・タイムとは、トヨタ生産方式の一つであり、必要な時に必要な分だけ物を供給する生産計画です。
Just-In-Time の頭文字をとって「JIT(ジット)」と略す方が多いですね。
今から何十年も前に、トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎氏が生産工程におけるムダをなくすために取り入れた生産方式であり、今でもほとんどの工場が参考にしています。
大量生産するのではなく、
「適正在庫数を決めて適切なタイミングで生産するんだから余計な在庫管理(コスト)は発生しないよね」
的な考え方です。
経営側にとっては非常に都合の良い生産スタイルと言えるでしょう。
ジャストインタイムの3原則

余計なコストがかからない生産なんてすばらしいですね!
過剰在庫で悩んでいる工場は、早速取り入れたいものです。
どんな方法で適正在庫や受け渡しのタイミングを決めているのでしょうか。
ジャストインタイムを成立させるためには主に3つの原則があります。
それぞれチェックして、まずは大まかなしくみを理解していきましょう。
後工程引取り
後工程は、必要なモノを・必要な時に・必要な分だけ前工程から引き取り、前工程は引き取られた分だけつくります。
工場のものの流れを想像すると
「○○が○個用意できたらから次の工程に渡すね!」
と上流からの指示に従って下流へ流していくイメージがありますがそうではありません。
下流から上流に向かって
「○○が○個なくなったから補充してほしい」
とアラームを挙げて、上流は不足分をのみ生産して下流在庫を補っていくのです。
トヨタの工場では各工程における補填在庫数が途切れないように「かんばん」を運用していることが有名ですよ。
工程の流れ化
工程内不具合などで物が停まってしまうと、納期に影響が出てしまいます。
ジャストインタイムの生産ラインを考える時は「細くて速い川の流れ」をイメージするとわかりやすいです。
川が細ければ、いつもより流れが遅かったり、止まったりしても、見る部分が限られているので原因が見つけやすいですよね。
生産ラインも同じで、なるべく細かい工程ごとに分けて生産をすることで、ちょっとした物の歩留まり(チョコ停)やトラブルの原因をいち早く発見できるでしょう。
必要数でタクトを決める
タクトタイムとは製品を生産するための平均作業時間(稼働時間/生産必要数)を指します。
生産管理はこのタクトタイムを最適な分量になるよう上手く調整することが重要です。
例えば、とあるラインをいつも固定人数で生産してれば、出荷台数が少ない時は在庫が余り、多いときは在庫が欠品してしまい稼働が安定しませんよね。
その時の出荷台数に柔軟に対応できるように、少人数ラインがおすすめとされていますよ。
ジャストインタイムのメリット

「トヨタ以外の工場もJIT生産をやたらと取り入れたがるのはなぜ?」
「結局JIT生産するとどんな効果が期待できるの?」
ジャストインタイムのメリットとは何のでしょうか…
ここかからはジャストインタイムのメリットについて3つ紹介していきます。
メリットを知って、JIT生産は工場のどんな悩みを解決してくれるのか、しっかり把握しておきましょうね!
工場のスペース確保
工場は様々な部品や各ユニットを在庫としてある訳ですが、当然多く持てば持つほど保管スペースの確保が必要となってきます。
「腐るもんじゃないから、大口案件に備えて作れるものはどんどんストックしておこう!」
という気持ちはわかりますが、これらを作るためには部品を置いておくスペースだったり、出荷されるまでに置いておくスペースも必要になりますよね。
各工程ごとに最低限の在庫しかもたないようにすれば、今までの余計な在庫スペースの節約が可能です。
在庫管理費の削減
ずっと物を置いておくにしても、在庫管理する以上、費用が発生している意識はみなさんあるでしょうか。
- 部品のピッキングや払い出しの工数
- 棚卸し時の労力
- 移動させるためのトラックの運送費
- 倉庫などの使用料
など「在庫を持つ」と同時に目には見えない間接的な費用もかかっている訳です。
また、作った在庫が売れないまま廃盤時期を迎えてしまったら、すべてムダなコストとして処理されてしまいます。
必要な分だけ生産していれば、このようなロスも回避しやすいでしょう。
改善活動の促進化
ジャストインタイムに向けて、工程の切り分けがきちんと整えられていれば、どこでトラブルが発生しているかがわかりやすくなります。
「この工程の必要数が充填できていない!」
「ここの工程で何か問題が発生している!」
など、工程内に潜む歩留まりの原因が発見しやすくなります。
こうした問題に直面すると、従業員の改善意識も高まるでしょう。
また、どこの工程でどんなことが起こっているのか、いち早く気づけるため、早急な対応が可能となるのもメリットと言えますね。
ジャストインタイムのデメリット

ここまでトヨタ生産方式のジャストインタイムのすばらしさについて、わかりやすく解説してきました。
しかし、メリットばかりではなく、当然デメリットもたくさんあります。
次にジャストインタイムのデメリットについて3つ紹介してきます。
デメリットを把握して、事前にしっかりとした対策がとれるようにしましょう。
在庫切れのリスク
「必要な時に必要な分だけ生産する」と簡単に言っていますが、実際どうでしょうか。
「海外のお客さんから超大口の受注入ったぞ!納期は今月厳守ね!」
と安全在庫を超える突発的な受注案件を営業に頼まれたとして、すぐに対応するのは難しいでしょう。
追加分はサプライヤに一から部品を手配するところから始まるので、なかなかの日にちを費やしてしまうのです。
そうなると、客先の希望通りの納期回答ができなくなり、せっかくの大口案件が最悪失注になりかねません。
下請け企業の負担
ジャストインタイムは社内のみならず、当然外部からの部材部品にも影響が生じるため、「下請いじめ」と呼ばれる傾向があります。
下請けのリードタイムは無視して、発注元の都合に合わせて細かく生産と納品をする必要があるので、JIT生産に付き合わされる下請け業者にとってはデメリットだらけなのです。
下請け業者の立場になって考えてみましょう。
早く納品してもダメだし、遅くれてもダメ。
生産数はその都度だから小ロット生産を強いられる上、親会社からの依頼はちゃんと守らないといけない。
条件次第ですが、そんな融通の利く下請け業者はだいぶ限られてきますよね。
現場内の負担
在庫を最小限に抑えるので、品質不良が発生すると、在庫切れを起こしてしまうリスクが一気に高まります。
ロット不良などが起きてしまえば、代替品が納品されるまでの間、生産が止まってしまうでしょう。
そのため、製造・品質管理に関わる従業員は品質維持に力を入れながらも、常に在庫を切らさないよう工夫して日常業務を行う必要があるのです。
会社にとってメリットがある生産体制であっても、仕組みを疎かにし現場任せにする工場ほど、従業員がストレスを感じてしまいますよ。
まとめ
ジャストインタイムができれば、無駄なコスト削減や工場のスペースを有効活用に期待ができる一方、下請け業者いじめや在庫切れにつながるデメリットなども挙げられます。
「あのトヨタがやってるから…」
と言って中途半端にマネしても、失敗するでしょう。
メリットやデメリットをしっかり考慮した上で取り組んだトヨタだからこそ成功した生産方式です。
まずは、JIT生産の仕組みをしっかり理解して、あなたの工場にあった生産スタイルを考えていきましょうね。
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