電子機器や大型設備を生産していると、多くのロボットケーブルと配線がごちゃごちゃに絡み合って整理するのが大変ですよね。
良かれと思って配線類を適当にまとめてしまうと、機器のパフォーマンス低下や安全面にもリスクが生じる可能性があるため、製造は配線取り回しに関して最低限のルールを知ることが重要です。
私も新人時代、配線の取り回し方で製造現場のベテラン従業員から何回も怒られた経験があります。
今回は、ロボットや制御盤などの配線取り回しの重要性とポイントについて、製造現場責任者であるゆとり課長が簡単に分かりやすく解説していきますよ。
本記事を読んで、綺麗で安全な配線の取り回しができるようになりましょう!
配線の取り回しが重要である理由
「配線なんてカバー閉じたら見えないところだから、別に気にしなくても…」
「配線を整理するメリットって何?」
見た目はともかく、配線が乱雑になると機械にどのような影響を及ぼすでしょうか…
まずは、配線の取り回しが重要である理由について3つ紹介していきます。
作業の目的をしっかりと理解し進めることが、製造技能上達への一歩です。
安全性の確保
配線が整理されていないと、稼働しているロボットのアーム等で配線を引きちぎってしまいます。
また、振動や曲げ応力が配線へ加わり続けると、しばらくして被覆が擦れて電線がむき出し状態になってしまったり、断線を促進させてしまうでしょう。
装置が動かないだけでなく、電気回路がショートし最悪火災にまで発展する可能性もあるので、生産者は長年安全に機械が使えるよう耐久性を考慮しながら配線を取り回す必要があるのです。
ノイズの抑制
ロボットや装置の回路にノイズが侵入すると、意図しないタイミングでいきなり動き始めたり、電気信号が細目にオンオフする怪しい動作(チャタリング)につながります。
ノイズの侵入経路は外部からの電磁波によっても影響をうけるので、電子機器にとっては非常に厄介な存在と言えますね。
ノイズは使用する部品や回路設計のみならず、配線の配置やケーブル同士の束ね方によっても左右されるため、設計者がノイズ対策を万全にしたつもりでも、最後配線の取り回しが悪いと全て台無しです。
製造工程で配線の取り回しに工夫を凝らすことで、ノイズを抑制し、安定した動作を確保できるでしょう。
メンテナンス性の向上
配線類が整理されていると、機械のトラブルが発生したときの修理や診断がしやすくなるでしょう。
メンテンナンス時にカバーを開けて乱雑な配線類が見つかったら、保全の方からクレームが入ります。
配線類が乱雑に位置されていると、問題箇所の特定が難しくなってしまい、機器の復旧に時間がかかってしまいますよね。
配線を種別ごとにまとめるだけでなく、マークチューブやテプラ等で接続先が視覚的にわかりやすくする配慮も必要です。
配線の取り回しで注意すべきポイント
配線の取り回しが重要である理由について紹介してきました。
見栄えだけでなく、性能やメンテナンス性にも関わってくるため、製造者の妥協は許されません。
では実際に機械組立時に配線はどのようにして取り回せば良いのでしょうか。
ここからは、配線の取り回しで注意すべきポイントを8つ紹介していきます。
配線の取り回しにおける最低限のルールを知って、品質意識の高いものづくりができるようになりましょう。
ACとDCの切り分け
交流回路(ACライン)はノイズの発生元となり、直流回路(DCライン)はノイズを拾う性質があります。
配線が乱雑だからと言って、電源ラインと信号線を一つの束にまとめてしまうと、信号線が電源ラインのノイズを拾いやすくなり、ロボットの誤動作につながってしまうでしょう。
配線を取り回す時は大きく2つ、電源ラインと信号ラインに分けて配置し、お互いなるべく距離を離しておくのがポイントです。
また、アース線除く電源ラインの電線2本は写真のように2cm感覚でツイストすることで磁界を打ち消し合い、ノイズの発生を和らげるとされています。
適切なケーブル長さ
「配線は短いよりも長い方が安心」
という気持ちはわかりますが、あまりに長すぎても電気抵抗やインダクタンスが増加してしまい、機械の動作遅延やパワーロスにつながってしまいます。
また、機体が小さくなればその分配線を収納するスペースも限られてくるため、あまり欲張った長さで作ってしまうと、機体に収まらなかったり、カバー取付時に電線噛みこみを誘発してしまうかもしれません。
人それぞれで配線長さが変わり性能に差が生じてしまうため、配線指定長さの最大○mm以内に収めるような基準を予め作っておきましょう。
配線の固定
配線が自由に動いてしまうと、摩擦や疲労によって電線の被覆が裂けたり断線につながる場合があります。
ロボットの動作や輸送時の振動などの繰り返し動作の蓄積が原因で、ショートしたなんて事例はわりと聞きますね。
ケーブルタイとタイベースを使って配線が動かないようにしっかり固定しておきましょう。
ただし、過度な力で電線を締め付けてしまうと、電線自体にストレスがかかるため注意が必要です。
過度な曲げや圧迫を避ける
ロボットケーブルの長さ調整のために、折りたたんで結束バンドで縛る方法がありますが、写真のように過度に曲げてしまうと、曲げ応力によって内部が断線する恐れがあります。
ロボットケーブルを固定するときは、急に折り曲げずゆるやかなカーブを意識してストレスをかけないようにしましょう。
ただし電源ラインの場合、写真のようにぐるぐると巻いて固定してしまうと、磁界が発生しやすくなるので、おすすめしません。
また、無理やり配線を部品同士の隙間に詰め込んで圧迫させてしまうと、絶縁体が破損して漏電する可能性もでてきますので、なんでもコンパクトに折りたたむのも注意が必要です。
接続部付近の取り回し
振動などが加わると接続したはずのコネクタが抜けてしまう可能性があるので、コネクタ付近のケーブル固定は重要です。
コネクタの根本部分を固定するときは、配線が突っ張らないように少し余裕をもたして取り回してください。
根本を急激に曲げたり、引張方向へのストレスを与えることで、しばらくして接触不良となってしまいます。
機械の動作を考慮する
ロボットの可動範囲を考えて配線の取り回しをしてください。
タイラップで丁寧にケーブルを固定したものの、いざ装置を動かしてみると可動域までケーブルが届かず、そのまま断線してしまうのは非常に悲しいです。
また、最大可動域の位置まで動かせても、ケーブルが引張方向へ常にストレスがかかってしまう状態では断線するまで時間の問題となるでしょう。
配線を取り回す時は、
- 装置が最大域まで動いても配線にストレスがかからないか
- 可動域で配線類が邪魔になっていないか
など、実際に装置を動かすユーザー目線で配線を取り回す必要があります。
特に動作前と動作後の配線根本の突っ張り具合はしっかり確認しておきましょうね。
発熱部分の回避
触るとやけどするような高温部分や、熱がこもる場所への配線の取り回しには注意が必要です。
配線が発熱部分に触れて被覆が溶けてしまったり、熱で経年劣化しやすくなり装置の不具合につながります。
熱が発生する機器周辺でのケーブル配置は、十分な間隔をとるか、放熱対策を検討しましょう。
どうしても発熱部分への取り回しが避けられない場合、配線自体を耐熱にするか、耐熱チューブで覆うなどの方法も考えてみましょうね。
鋭利な部分との接触は避ける
板金の曲げ加工部分などの鋭利な角との接触は、配線の被覆を傷つける原因となります。
「そんなに負荷かかってないから大丈夫」
「触れているだけだから問題ないだろう」
など、最初見たときは特に違和感ないかもしれませんが、振動が加わり続けると簡単に被覆が裂けてショートしてしまう非常に危険なポイントです。
板金の角と接触するポイントには、自在ブッシュ(通称:ゲジゲジ)で保護することで、配線へのダメージを低減させますよ。
自在ブッシュも種類は様々あり、板の厚みによっても適応サイズが変わるのでぜひチェックしてみましょう。
まとめ
電子機器において配線の取り回しは品質を左右する大きな要素の一つであり、知らないままなんとなく配線を整えてしまうと、装置が不具合を起こし最悪事故につながります。
ノイズなどの電気的要素、電線の強度や経年劣化といった機械的要素の観点からよく考えて配線の取り回しをする必要があります。
したがって、配線の取り回しは製造者のセンスが試される技能です。
今回ご紹介したポイントをしっかりおさえた上で、美しい配線の取り回しができるようになりましょう。
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