電気工作には欠かせないはんだごてですが、みなさんは正しく扱えるでしょうか。
「中学校の授業で一回だけ使ったことある」
「はんだこてなんか触ったことないです」
といった方々がほとんどだと思います。
私は装置メーカーの製造部門に入社して、これまで100人以上はんだ付けの新人教育をしてきましたが、理系工学部出身の学生でも、はんだこてを触ったことがない方が半数くらいいますね。
はんだこては、正しく使わないと事故や品質不良につながりますよ。
そこで今回は、久しぶりもしくは初めてのはんだこてを触る人向けに、はんだ付けのやり方について簡単に解説していきます。
自作キーボードやオーディオではんだ付けに挑戦したいけど自信がない方は、本番前に一度読んで失敗のリスクを減らしましょう!
準備
はんだ付けする前にまず準備をしっかりやっておかないと、後々詰みます。
まず、はんだ付けするために必要なアイテムはいくつかありますが、
- はんだごて
- 糸はんだ
- はんだごてを置くスタンド
- こて先クリーナー(濡れたスポンジ等)
は最低限準備しておかないとはんだ付けできません。
道具を一式用意できたら、すぐに始めず作業スペースの確保と安全対策も考慮しておきましょう。
作業スペースの確保
平らで安定した場所を選び、周囲を整理します。
現場によってはかなりアクロバットな体勢ではんだ付けするシーンもありますが、基本的には椅子に座って作業台の上で行います。
作業台は広く使わないと、作業効率や精度に影響するでしょう。
- 余計なものは片付ける
- ビニール袋や電源コードなど熱で溶けてしまうような材質はコテ先付近に置かない
- 半田コテは利き手側に設置
など、よく考えて作業スペースを確保してください。
安全対策
はんだ付けする上での注意点は、以下の2つになります。
- やけど
- はんだを溶かした時の煙
約350℃まで熱したはんだごてを扱うため、コテ先はもちろん、熱したばかりの半田や端子部分は激熱です。
手袋や保護メガネがあると、飛び散ったはんだが手についたり、目元に飛んで火傷するリスクを回避できるでしょう。
はんだの煙がよくない理由は昔主流であった鉛入りはんだが人体に悪影響を及ぼすからです。
近年は鉛フリー(鉛が含まれていない)はんだが主流なので、問題ないと言いたいところですが、やっぱり煙はよろしくないので、吸煙機や風通しの良い部屋で行うのが理想ですね。
はんだこての使用手順
準備が整いましたら、いよいよはんだ付けです。
「はんだこてってどうやって持てば良いの?」
「はんだ付けはどんな手順でやるのが正しいの?」
いざ自分が買ってきた部品に半田付けしようとすると、緊張してしまいますよね。
はんだ付けには上手い下手関わらず、最低限おさえておきたい正しいルールや手順があり、知らないと部品を壊す恐れがあります。
ここからは、はんだこての正しい使い方と手順を簡単に解説していきますよ。
実施前にチェックして、失敗リスクを低減させましょう!
はんだごての加熱
はんだこてのコンセントを差し込み加熱していきます。
はんだこての種類にもよりますが、温度調整機能付き(ステーション型など)であれば350℃設定で行いましょう(鉛フリーはんだの適正温度)。
はんだこての持ち方はグリップ部分を軽く握り、ペンと同じ持ち方でOKです。
右利き左利き、持ちやすい方どちらでも構いません、
注意すべき点は、コンセントを差した瞬間にコテ先が熱くなるため、スタンドに立てかけるかグリップ部分をしっかりもった状態で電源を入れましょう。
当然ですが、コテ先部分(写真の赤い部分)を触るとやけどするので注意してくださいね。
はんだの準備
一般的に安全性の観点から鉛フリーのはんだが推奨されていますが、DIYとか個人の趣味で扱う分にはなんでも良いと思います。
ロールに巻いてある半田をそのまま使ってもいいですし、必要分だけ切って用意するのもありです。
状況にもよりますが、基板へのはんだ付けをする場合、右手に半田ごて、左手に糸はんだをもって作業していきますよ。
左利きの方は逆に持ちましょう。
はんだこての清掃
はんだ付けを行う前に、必ずコテ先の酸化物を除去するクセをつけましょう。
これができてるかできてないかで仕上がりは大きく左右されますよ。
前回のはんだやフラックス剤がコテ先に残っていると、はんだの濡れ性が悪くなり失敗の原因になりますからね。
水を含んだスポンジ等の上でコテ先をなでるようにクリーニングしていきます。
コテ先にヤニがこびりついて、スポンジでは除去しきれない場合、金属のキリコの塊みたいなワイヤークリーナでガシガシ突っ込んでいくと、綺麗になるのでおすすめです。
必要に応じてはんだの濡れ性が良くなる(馴染みやすくなる)フラックス剤があると便利ですが、まあなくても何とかなります。
はんだ付け
初めてはんだ付けをする方でよくやるダメのパターンが、半田をコテ先で擦り付けるやり方です。
接続部分をコテ先で温めてから半田を流す順番でやらないと、上手く半田が乗らず、何回も繰り返すうちに部品が溶けてどうしようもなくなります。
具体的に次のような手順が基本となりますよ。
- 基板のランドを0.5秒くらいコテ先で温める(半田をのせる部分の大きさで当て時間変わる)
- コテの先端に糸はんだを接触させて、ランド上に適量はんだを流し込む
- 糸はんだを離す
- はんだコテを離す
1~4までが約2秒間くらいですかね。
あんまり何秒間も熱を加え続けると、基板のパターンが焼けてしまうので注意です。
不安な方は本番前に10回くらい素振りしてください(業界ではかっこよくシャドー半田って呼んでます)。
冷却
はんだが固まるまで触れずに待ちます。
はんだを流して、はんだごてを離した直後はまだ基板側に熱が残っているので固まっておりません。
はんだ付けした実装部品は、はんだが固まるまで動かないように支えておきましょう。
あとはんだ付け直後の基板は触るとめちゃくちゃ熱いので注意です。
後片付け
使い終わったら、コテ先をクリーニングした後、ヤニ入りはんだを少しのせた状態で電源を切ります。
コテ先にはんだをのせた状態で保管する理由は先端の酸化を防ぎ、はんだこての寿命を延ばすためです。
コンセントから抜いたはんだこてはしばらく放置して冷ましてあげる必要があるため、終わったからといって安易にこて先に触れるのはやめましょう。
また、はんだが飛び散った際に固まったカスが机に残っていると、体に刺さったり、製品の異物混入につながるので、綺麗に掃除をしてくださいね。
まとめ
はんだこての使い方について一通り簡単に紹介していきました。
はんだ付けを失敗しないための大事なポイントは
- はんだこてのクリーニングする習慣
- コテで温めてからはんだを流す
- はんだこては高温なので使い方注意
という点ですかね。
はんだ付けは知識も大事ですが、実務を積まないと上達しません。
はんだ付けができるようになると、仕事のみならず車の電装部品改造や家電修理などものづくりの範囲が広くなりますよ。
今回ご紹介したポイントをおさえて経験を積み、高度なはんだ付けにも挑戦していきましょう。
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