設備機器を扱うお仕事をされる方で、装置の水平出しで戸惑った経験ありませんか?
設置場所の作業時間も限られているので、なかなかレベル出しが上手くできないと、焦っちゃいますよね。
レベル出しはまず水準器の見方を理解し、傾き状態をすぐにイメージできることが大切です。
今回は水準器の目盛の読み方と4本脚の装置を例としてレベル出し手順を紹介していきます。
本記事を読んで、現場でのレベル出し作業をスムーズに行えるようになりましょう!
レベル出し(水平出し)とは

装置のレベル出し(水平だし)とは、機械設備が水平または垂直に設置されていることを、確認・調整する作業です。
レベル出しをせずにただ装置を置いただけですと、質の悪い4本脚の椅子のようにガタガタの状態で動作することになります。
工作機械や測定器などの精密機械の場合、ガタツキがなければOKという訳でなく、見た目でわからないような微妙な傾きがあると、精度や性能に影響が生じ信頼できる結果が得られません。
したがって、各ユニットの組立が上手くできても、装置の立ち上げ時はレベル出しをしてから動かすようにしないと、不良品として扱われてしまうでしょう。
地面と水平かどうか、わずかな傾きを見るためには水準器(水平器)使いながら調整していきますよ。
水準器(水平器)とは
「水準器ってそもそもなに?」
「水平器の使い方を知りたい!」
水準器(水平器)とは、物体の水平や垂直を測定するための工具です。主に、建設や設置作業、測定、機械の調整などに使用されます。
水準器と水平器の違いですが、測定する対象物の水平だけ見る(水平器)か、それとも垂直や45°など様々な傾斜を見る(水準器)のかの使い分けがあるようです。
実際現場の方々は特に水準器と水平器の違いを気にしておりませんのでどちらでも通じるでしょう。
水準器の種類は様々であり、ガラス管の気泡の位置で判断するものから、レーザーを用いて厳密な位置決めをするタイプがありますよ。
今回は、簡易的かつそこそこ精密に測れる気泡管精密水平器を紹介していきますね。
気泡管水平器のしくみ

気泡管水平器とは上の写真のように、中心透明部分に液体(アルコールやエーテルなどの粘度サラサラ系)が注入されていて、水平になればなるほど気泡がセンター寄りになり、傾斜が大きくなるほど気泡が外側へ位置するしくみになっています。
見た目アナログな計測器ではありますが、気泡管精密水平器の感度はJISで等級が区分されおり、
- 1種:0.02mm/m
- 2種:0.05mm/m
- 3種:0.1mm/m
といった精度のラインナップがありますよ。
写真の気泡管精密水平器は一番精度が粗い3種(0.1mm/m)ですが、これでも十分に細かい数値の読み取りは可能です。
「全部1種(0.02mm/m)でやれば間違いないじゃん!」
と思うかもしれませんが、求める精度が高くなるほどレベル出しの調整はなかなかハードになりますね。
レベル出しでどこまで精度を求めるかで使用する水準器の等級は変わるので、念のため装置設計者に確認をとっておきましょう。
気泡管水平器の見方

「とりあえず、水平出しするなら水準器の気泡の位置が真ん中にくればいいんでしょ」
と言われてしまえばそうなんですが、意外と目盛の読み方がわからない作業者がいるので簡単におさらいしておきます。
水準器の側面に表記されている数字、今回の場合「1DIV=0.1mm/m」ですが、これは気泡1目盛分の傾斜を、底辺1000mm(1m)に対する高さ0.1mmで表しています。
つまり図のように気泡の位置が2目盛中心からずれると、底面1m範囲内で最大高さ0.2mmの傾斜が生じていることが読み取れます。
「気泡が寄っている方向に向かって高くなる」というイメージができるようになりましょう。
4本脚装置のレベルだしの方法
「レベル出しの方法を知りたい!」
「レベル出し方のコツってあるの?」
レベル出しの経験がないと、一人で納品先へ機械を設置する時にスムーズにできるか不安になっちゃいますよね。
ここからは、気泡管水平器を利用して4本のアジャスターがついた装置のレベルだしの方法を図で簡単にわかりやすく解説していきます。
水平出しのコツは人によって様々なので、これが絶対に正しい方法というのはありませんが、やみくもにアジャスターをいじって調整するやり方は非効率です。
参考までにチェックしておきましょう。
水準器の設置

上図は4本のアジャスターがついた装置を真上からみた様子です。
LMガイドの直行軸や装置内のワークベースなど地面と水平にしたい場所に水準器を設置しましょう。
水準器の設置面は清掃し、段差がない平らな場所を確保してください。
水準器が2個あれば、図のようにX方向とY方向ぞれぞれT字に揃えて設置するとやりやすいですよ。
1個の場合は一方向調整し終えたら90°回転させる必要があります。
現状の傾きを把握する
水準器の気泡が中央に来ていればOKですが、気泡が中央からずれていれば装置は傾いています。
先ほどの真上から見た図の気泡の位置を見てみましょう。
X方向は左側にずれていて、Y方向は下側に位置していますよね。
つまりどういう傾斜になっているかイメージつきますでしょうか…
先ほども説明しましたが、気泡が寄っている方向に向かって高いため、真上からみた図の装置は左手前から右奥に向かって下り坂になっているイメージです。
このように、設置した水準器の気泡位置を見てどんな傾斜になっているか頭でイメージできることが重要です。
アジャスターの高さを調整
装置の傾きが見れたら、アジャスターなどのネジで足の長さを調整し、水平出し作業に入ります。
手順を無視して感覚的に水平出しできる匠がいますが、慣れないうちはX方向、Y方向の順にレベリングし、最後に全体を微調整する流れが無難です。
3点で高さ決めて、残り1点(最初一番高かった位置)は添えるだけのイメージをしておきましょう。
では実際にどの部分のアジャスターをいじれば良いかを解説してきます。
X方向

まずは、X軸方向だけを見ていきましょう。
左側に寄っている水準器の気泡を真ん中の位置まで移動させたい。
つまり、左側の脚の方が高くなっているので右側2点のアジャスターを同じくらい気泡の位置が中央にくるまで締めていきます。
Y方向

次にY軸方向だけを見ていきましょう。
下側に寄っている水準器の気泡を真ん中の位置まで移動させたい。
つまり、下側の脚の方が高い傾向にあるので上側2点のアジャスターを同じくらい気泡の位置が中央にくるまで締めていきます。
右上のアジャスターは先ほどX軸方向を調整する際に一度締めているため、左上よりも若干高めになっているかもしれません。
最初は左上を少し締めてY軸方向の気泡に変化するかを注目し、変化が見られなかったら右上のアジャスターを締めて様子をみるのがコツです。
調整

X軸方向、Y軸方向の水準器をもう一度見直し、気泡位置がずれてれば左上、右上、右下の3点で微調整していきます。
3点の位置が決まり、水平出しが確認できれば、左下の4点目のアジャスターが地面と接触しているかの確認をしてください。
浮いていなかったらそのままで大丈夫です。
もし地面から浮いていたら、手締めして水準器の気泡が動かない程度に地面と軽く接触させておきましょう。
最終チェック
装置の水平出しが確認できたら、最終チェックを行います。
- 装置を支えている脚はすべて地面と接触しているか
- 調整し終えたアジャスターにロック機構などがあれば固定する
- 最後にもう一度水準器をみて水平が維持されているか確認
など、レベル出し作業のやり残しがないかを確認していきましょう。
レベル出しのポイント
ここまでレベル出しの方法について簡単に解説していきました。
結局このレベル出し方は何をしているのか補足しますと、初期状態で4点のうち一番高いポイントを基準とし、残り3点でレベル出しをしています。
一番高いポイントは基準なので3点が決まるまで動かさないのが上手くできるコツです。
できれば4点とも最低限の高さで調整したいので、最初レベル出しする前の初期位置はアジャスターが効き始めの境目からスタートさせるのもコツです。
まとめ
機械設備のレベル出しは、機械の性能や安全性を最大限に引き出す重要な調整作業です。
いくら良い製品でも、設置が上手くできていないと、すべてが台無しとなってしまう可能性があります。
そうならないためには、水準器から正確に傾き具合を読み取って、適切に脚の高さを調整するスキルが作業者に求めれられます。
理屈を知って、新人教育や現地でスムーズな作業ができる有能な機械エンジニアになりましょう!
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