「ねじ締めなんて教えられなくても簡単に誰でもできる」
と油断していたら、締結ミスして取り返しのつかないトラブルに見舞われた経験ありませんか?
製造業においてネジの締結不良が一か所でもあると大きな事故や市場クレームに発展し、ものづくりメーカーとして品質と信頼すべてが台無しとなります。
技術職で機械要素の知識に長けた方でも、いざ現場で作業しようとするとわりとネジ締めの基本ができていません。
ネジ締めの原理や種類と言った基礎知識も大事ですが、実際に締結作業するにあたって注意すべきポイントやコツなどの技能要素も重要です。
本記事ではプラスドライバーを使ったネジ締め作業の基本について、装置メーカー製造歴10年以上のゆとり課長が簡単に解説していきます。
新人の方のみならず、しばらく工具を使っていなかったエンジニアの方々もぜひ参考にしてください!
ネジ締めの基本【ドライバー】
機械組立の基本である締結作業ですが、ドライバーやレンチなど工具の使い方について教育を受けましたでしょうか。
工場でネジ締めに関わるトラブルが発生し、原因調査を進めると未だに
「従業員にネジ締めの教育ができていませんした」
という回答が挙がりますね。
ドライバー等は見よう見まねで簡単にネジ締めできるので、プラスドライバーの使い方を一から教わるという場は少ないのでしょう。
今回は一般工具の中でも使用頻度が高い、プラスドライバーを使ったネジ締め作業について7つのポイントを簡単に解説していきますよ。
正しくネジ締めできれば、安定した締結力が維持でき作業もスムーズに進みます。
ネジと工具の適合

ネジにはサイズや頭の形状など種類が豊富です。
ネジ頭が十字の溝であればプラスドライバーを使いますが、プラスドライバーにも種類や適合サイズが存在しますよ。
機械組立でよく使う十字穴付きねじの種類はフィリップス型(H型)で、サイズは小さい順に0番~4番です。(4番は私持ってませんでした…)
ネジ締め前にビット先端が遊びなくぴったりはまるかどうかを確認しましょう。
適切なサイズのプラスドライバーを使わないと、ビット先端と溝に隙間が生じ、ネジ溝がなめます。
新人がよくやってしまうのが、2番のネジ溝(M4トラスねじ等)に1番のドライバーを使ってなめてしまうパターンです。
たまたまカムアウトせずにネジ締めできる(できているように見える)場合がありますが、溝をよく見るとビット先端でえぐったようなバリが確認できますね。
工具の握り方

プラスドライバーの持ち方は厳密に決まっていません。
- 左利きでも右手で持たないといけない
- 逆手持ちはだめ
みたいな工場のウワサがあるようですが、その場の状況で持ちやすい握り方ができれば問題ないでしょう。
グリップ側を回すとトルクがだせるので、強めにネジを回したい時ほど、グリップ部分を手のひらでしっかり握ることが重要となってきますよ。
ネジ締めするワークが固定されている状態であれば、上の写真のように両手で軸とグリップを持ち、
- 回し始めは力をいれず軽く軸だけくるくる回す
- 少し抵抗を感じてきたら押す側に力を加えつつ軸とグリップ両方を交互に指先で回す
- 最後にグリップ側を握って本締め
といった手順でネジ締めすると、軸ブレせず安定しながら素早いネジ締めが可能です。
ネジ山の入口を探す

オネジとメネジが上手くかみ合うことでネジは締まっていきますが、噛み合わない位置で無理やり入れようとするとねじ山(タッピング)が壊れて使い物になりません。
メネジ側が肉薄だったり樹脂などの柔らかい材質だと、ねじ山の入りが悪くても意外と抵抗なく回ってしまい、簡単にネジ山をダメにしますね。
ねじ山と噛み合う位置探すために、最初は手締めでソフトにネジを挿入する方法があります。
他にも写真のように、挿入はじめ一旦メネジ側に向かってドライバーで軽く押しながら緩み方向に回すと、「カチッ」とピッチ同士が噛み合う位置があり、そこから締結をスタートすると、安全にネジ締めができるでしょう。
簡単で確実にできるネジ山破壊対策なので、ぜひコツをつかんでください。
ドライバーを垂直に保つ

ドライバーの刃先が斜めになった状態でネジ締めすると、カムアウトしてネジがなめるか、刃先でワークを傷つけます。
そのため、ドライバーを垂直に維持しながら締結するのが重要となりますよ。
ポイントは軸がぶれないように、押す力と回す力を7:3で意識すると良いでしょう。
押す力は締結時のみならず、固まったネジを外すときにも非常に重要です。
力を均等にかける
トルクレンチでトルク管理せずとも、ある程度手感で均一に締結できる技能スキルも大事です。
ステンレスボルトなど一般的な締め付けトルク参考値はJIS規格で以下のように定義されています。(T系列)
ねじ径 | 締付トルク(N・m) |
M2 | 0.174 |
M3 | 0.634 |
M4 | 1.48 |
M5 | 2.98 |
M6 | 5.07 |
M8 | 12.3 |
ちなみに車とか建設関連のトルク基準はこれよりもガチガチに強いですね。
細かい数値は別として、トルクレンチなどあれば大まかにどの程度の強さが適切なのか、上の表を参考に試してみるのも手です。
また、材質などでも変わるので、締結するワークが樹脂や柔らかいアルミの場合は、破壊しないように慎重に締めましょう。
締結力は弱いよりかは強い方がマシですが、強すぎても良くないので加減が分かるまでは何回か反復練習してください。
クロスパターンで締める(複数のネジを締める場合)

上図の数字はネジ部が複数あった場合の締める順番を表しています。
締結の順番は次の通りに行いますよ。
- 対角線上に締める
- 内側にあるねじから締める
- 大きいねじから締める
- 全てのねじを仮締め後、本締めする
身近なものですと、車のタイヤ交換時にボルト締め付けを対角順にやるイメージと同じです。
更に内側から外側に向かって締結することで、ワークの歪みを抑え均一に固定できます。
また、ネジサイズが大きいものから優先して締めるので、複数あるうち一部サイズが小さいネジがあった場合は、上図のような順番で締めると良いでしょう。
最終的な締め具合の確認
最後に必ず自分が締結したネジがちゃんと締まっているかの確認をしてください。
ネジの抜けや緩みは厳禁です…がなかなか撲滅できない悩みを抱えた現場も多いでしょう。
「時間がない」「たぶん大丈夫」はものづくりの死亡フラグですよね。
確認方法は様々で、トルクドライバーを使って再度確認する方法もありますが、オーバートルクにならない程度に一点ずつドライバーで増し締めを行う確認方法などもあります。
ネジの締め忘れがないことを確認するまでが、ネジ締め方の基本作業です。
まとめ
ネジ締め方には正しいやり方や基本ルールがあり、知らないで何となく締めているだけだといつかトラブルに発展します。
特にプラスドライバーは工具の中でも非常に出番が多いため、一番最初に習得すべき技能項目となりやすいです。
工場勤務の方々は、
「プラスドライバーでのネジ締めなんて教わらなくても誰でもできる」
と思わないで、教育資料や定期的な技能訓練をぜひ職場にも取り入れましょう。
今回紹介したポイントを意識して、安心安全な作業に取り組んでくださいね。
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