【機械組立の基礎】素人とプロの仕上がりの違い

素人とプロの出来栄え差 ノウハウ

「機械組立なんて、図面と部品と工具さえあれば誰でもできる」

と思っていませんか?

DIYなら自分自身が納得すれば良いので問題ありませんが、ものづくりで商売する立場のプロフェッショナルな方々は、作るだけでなく一定レベルの出来栄え品質が問われますよ。

私も学生時代はよくロボットの組立をしていたので、機械組立には自信があった方ですが、製造業に就職し工場勤務になったことで、今までものづくりで意識していなかったポイントがたくさんありました。

今は教える側の立場になりましたが、やはり同じ製品でも、技能訓練してきたプロの作業者と入社して間もない新人の出来栄えは一目瞭然です。

そこで今回は、機械組立の技能者と素人の出来栄えにおいて、どんなポイントに差が生じるのかを紹介していきますよ。

出来栄え品質の違いを見抜く機械エンジニアとなり、プロ目線でものづくりができるようになりましょう!

目立つポイント【メカ系】

「機械組立の出来栄えってどんなころを注意すれば良いの?」

「自分のつくった製品は客先へ出荷して良いレベルなのかな?」

工場へ配属したばかりだと、組立工程で通常どんな出来栄えが求められるのイメージできませんよね。

そもそも技能教育を受けていなかったら、できなくて当然です。

まずは、技能を教わっていない素人が機械を組み立てるときにありがちな急所を紹介していきます。

機械組立の基礎的なポイントとなりますので、ぜひチェックしておきましょう。

締結

ネジ・ボルトの締結は誰でも一度は経験しているので、技能訓練を怠る傾向にありますが、入社して間もない新人が組み立てた製品を見ると、

  • 自分が思っているよりネジの締付力が弱い
  • 過剰トルクでタップや相手側の材質を破壊
  • ネジがなめた痕跡がある

といった現象のどれかに必ずあてはまります。

締結するための適切な工具選定やネジの扱いに関するスキルが身についてないことが原因と言えるでしょう。

組立技能者として仕事をするためには、ねじ締めの原理を知るのとトルク感覚をしっかりつかむ教育訓練が必要です。

位置決め

位置決めとは、ワーク(部品)が動かないようにしっかり保持して、狙った位置に部品を固定する作業です。

機械工学において各々の接合部分には多少遊びを持たせた設計が基本なので、適当に部品同士はめ合わせたりネジで固定すると、傾き・軸ずれが発生します。

真っすぐ取り付けするために専用の位置決め治具があると便利ですが、特に用意されていない場合は図面に指示がなくても組立作業者が良い感じに位置を調整していきますよ。

位置決めが必要なケースは、

  • モーターシャフトとカップリングの軸だし
  • 2本のLMガイドの平行だし
  • 板同士を固定する時の面(ツラ)合わせ

などが挙げられるでしょう。

位置決めが下手だと見栄えに影響が出る他、摺動部の抵抗が増加し、製品の性能や寿命に大きく影響します。

レベルだし(水平だし)

産業機器を設置する時に必ず行うのがレベルだし(水平だし)です。

ほとんどの大型産業機器の土台には、高さ調整ができる足(アジャスター)が数か所備えられており、設置する床と装置の位置関係水平になるまで調整しなければなりません。

レベルだしができないと、品質の悪い椅子のように製品自体にガタツキが生じてしまい、振動による負荷や精度を狂わす原因となるでしょう。

機械組立の基礎であるため、特に指示がなくても製造部門でしっかり調整する必要があります。

レベルだしを水準器やダイヤルゲージを使って、現地の設置場所にすばやく対応できると、有能な製造スタッフとして認知されますね。

汚れ

生産者は精度や機能のみならず、製品の外観に対する意識が求められます。

人間は物の完成度を見る時、お客さん目線だと厳しいのに、製造目線になると急に妥協し始める傾向にあります。

「売り物を作っている」という品質意識のない人が作った製品を見ると…

  • 板金類に皮脂や指紋が残っている
  • 工具を当てたような打痕や細かな傷がついている
  • 接着剤や切削油などのケミカル剤の除去が雑

といった外観の仕上がりになりがちです。

もちろん、汚れた製品をそのまま出荷してしまうと、いくら機械の性能が一定基準を満たしたとしても、クレームに発展しますよ。

自分が対象製品を買うお客さんの立場になって判断しましょう。

目立つポイント【電気系】

「電気系統の箇所なんて信号が出力されていればOKでしょ」

「どうせカバーや端子に覆われて見えないから大丈夫」

なんて思考は機械組立の作業者として失格です。

配線系の処理が雑だと、製品の間接的な動作不良を招き、最悪思わぬ事故に繋がります。

配線処理などの電気系統の仕上がりポイントとしてどんな箇所を見られるのでしょうか…

ここからは、技能を教わっていない素人が配線処理をする時にありがちな急所を紹介していきます。

何をやったらダメなのか技能ポイントを理解して、良否判定できるようになりましょう。

はんだ

はんだは接着剤のように機械的な接合目的で使うのではなく、電気的接合が目的です。

「くっつけば問題ない」という安易な考えは、導通不良や強度不足による断線に繋がります。

はんだ付けは圧着や締結などと比べて見るべきポイントが多く、技能レベルがはんだの形状として表れやすいと言えますね。

はんだ付け不良の例としては、

  • いもはんだ
  • コールドジョイント
  • 溶け
  • ツノ

などがあります。

中学校の授業でやったことあるくらいのレベルでは残念ながら経験者と言えません。

はんだの知識があっても、実際の工場や技能学校などの専門施設で技能訓練した者でないと扱うのは難しいでしょう。

圧着

上手い下手というよりかは、それぞれの端子に対して適切な圧着ができているか、できていないかの二択しかありません。

「圧着は半田付けよりも作業時間が短く熟練者でなくとも安定した品質を保てます」

と言われていますが、電気系統の装置不具合で一番多い原因が圧着不良だと個人的には思います。

おそらく、「はんだより簡単にできる」というイメージから圧着工具さえあれば誰でもできると思われやすいのかもしれませんね。

初心者の方でもたまたま上手く圧着できる場合もありますが、なんとなくでやっている人の圧着は次のポイントを見るだけですぐわかりますよ。

  • 電線の被覆の剥き長さ
  • かしめる位置
  • かしめ形状

他にも確認項目はありますが、どれか一つでもあやしい箇所があると、抜けや導通不良となるため、全て見直しが必要です。

ロボットケーブルの切断

ケーブルや配線類の断面なども技能差がでます。

新人の方が切ったケーブルを見ると、

  • 切断面がフラットに切れていない
  • 被服剥きすぎて心線に傷が入っている

などがあるあるですかね。

ただ切るだけの作業でも、ニッパーの刃先向きや電工ナイフの使い方を注意しないと、品質にも影響がでるでしょう。

ちなみにケーブル心線に傷が入ると、一発退場で作り直しです。

配線の取り回し

装置メーカーあるあるですが、配線の取り回し作業は、作業者の技能センスに委ねられる傾向にあります。

配線の取り回しを考慮する設計図が技術サイドから常に展開されるとは限りません。

  • 配線へのストレス
  • 配線の曲げ
  • ACラインとDCラインの分別
  • 装置の可動を想定した配線の固定

ポイントを抑えながら限られたスペースで固定するのはもちろん、ベテラン作業者は綺麗に配線を取り回しますよ。

配線の取り回しがされていない、もしくは何も考えずにただ結束バンドでまとめただけの製品は、動作はするものの、後々ノイズや振動の影響を受けるリスクが高まるでしょう。

まとめ

機械は動けばOKという考えは素人と変わらないので、仕事であれば見た目や仕上がりにもプロ意識を持って生産しましょう。

「これからファクトリーオートメーションの時代だから人の技能習得なんて時間の無駄」

という考えもありますが、自分で手作業の経験を積まないと細かい急所を見落として、自動化もいずれ失敗します。

ものづくりの職人さんが普段どんなポイントを気にしながら製品を仕上げていくのかを、自分で技を習得し初めて言語化できるようになりますよ。

今回紹介した機械組立における基礎や最低限守るルールを理解し、まずは自分の作った製品に自信が持てるよう頑張ってください。

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