製造業で働く従業員は上司からよく、
「君のその作業の工数はどのくらい?」
と聞かれませんか?
聞かれる頻度が高いと、
「いちいち聞くなよめんどくさい」
って現場の人は思っちゃいますよね。
みなさんは日頃工数を気にしながら仕事を取り組んでおりますでしょうか…
なぜそんなに製造業で工数が重要視されるのか、いまいちピンと来ない新人エンジニアも多いと思われます。
今回は工数管理が製造業においてなぜ重要なのかを、製造歴10年以上のゆとり世代課長が簡単に解説していきます。
工数の重要性を理解し、ものづくりにおける仕事の質を高めていきましょう!
工数とは
「工数ってそもそも何?」
「工数の定義を知りたい!」
学校では聞き慣れない言葉なので、工場勤務して初めて聞く方も多いのではないでしょうか。
工数とは「工数=作業者人数×時間」で作業量を数値化したものです。
製造業における工数の取り方は作業する規模などで変わり、月や日付単位でざっくりだしたり、細かい作業だと時間から秒単位で工数をとります。
工数管理をする上で抑えておきたいポイントは大きく分けて標準工数と実績工数の2つになるでしょう。
まずは標準工数と実績工数のそれぞれの役割を知って、どんな違いがあるのかを理解していきましょうね。
標準工数
標準工数とは、特定業務にとりかかるための必要時間の基準になります。
「普通レベルの技能や知識を持った人がこの量の業務をこなすには○分かかります」
といった感じで、業界基準や過去データに基づいた平均時間で標準工数は設定されますよ。
標準工数は基準値となるため、前工程の遅延や不具合発生などイレギュラーは考えず、全て順調に進む前提で時間設定するケースがほとんどです。
各業務において予め標準工数が設定されていると、生産スケジュールや予算の見積もりが可能になるため、製造業に限らずどんな業界でも非常に重要なデータとなるでしょう。
実績工数
実績工数は、特定業務に対し実際に費やした時間です。
実工数とか実稼働工数なんて呼ばれたりもします。
実績工数は標準工数と違い、予期しない問題や変化も含め、リアルにかかった時間の記録を元に集計していきますよ。
標準工数と比較し、「なぜ差異が発生したのか」を原因を調査し、工程内の課題や変化点を見つける判断材料に使われますね。
いわゆるプロセス改善のためのデータと言えるでしょう。
工数管理が重要な理由
標準工数と実績工数の違いは理解できたでしょうか。
違いはわかったけど、なぜそんなに製造業で工数が重要視されるのか、いまいちピンと来ない新人エンジニアも多いと思われます。
ここからは、製造業において工数管理が重要な理由を6つ挙げ、わかりやすく簡潔に解説してきます。
重要視される理由を知って、自分にとって価値のある工数管理ができるようになりましょう。
コスト管理
コストと聞くと部品代とか材料費などの形あるものに対して発生するイメージがありますが、製造コストのほとんどは人件費や加工機の設備稼働費です。
したがって工数の増減によって、コストは大きく左右されるでしょう。
なので、コストダウン目的で部品代や材料費の価格を抑えた結果、生産工程が増えたり扱いが難しくなって製造工数が逆に増えてしまっては、総合的に見て逆効果になってしまいます。
また、コスト管理できれば予算策定に役立ち利益維持にもつながるため、企業にとってめちゃくちゃ重要です。
生産性の向上
標準工数に対して実績工数を分析し、無駄な作業や非効率な工程を特定できれば、生産性の向上に繋げられます。
どこの工程でどれほどの工数がかかるのか数値を把握できれば、改善の優先順位も決めやすくなるでしょう。
また、作業手順に沿って標準工数を設定し、標準作業として定着させることで、安定した生産性の維持にもなりますよね。
品質の維持
工数を適切に管理できれば無理のない生産計画で作業を進めれらます。
納期ギリギリの生産スケジュールが続いてしまうと、作業者にとって肉体的・精神的な負担となり、ヒューマンエラーや仕上がりのバラツキを引き起こす原因となりますね。
また標準工数と比べて実績工数が異常に早かったりすると
「どこかの工程が抜けているのでは?」
「雑に作業して品質に影響出ていないよね?」
といった、品質トラブルにおける考察も可能となるでしょう。
限られたリソースを最適に配分し、過剰な作業や負荷を避けることで、品質の維持が容易になるのです。
納期の遵守
正確な工数を見積もることで、スケジュール管理がしやすくなるでしょう。
予め作業量がわかっていれば、進捗に応じて仕事の優先順位もつけやすくなり、納期遅延を抑えれます。
特に工場の製造部門は納期との勝負になります。
約束した納期が過ぎてしまうと、めちゃくちゃ怒られるどころか、取引先によっては違約金が発生していしまうケースもありますからね。
工場側は工数の見直しと最適化によってリードタイムを短縮し、顧客からの注文に迅速に対応することが常に求められるのです。
人材管理と育成
工数が明確であれば、適切な人数やスキルを持った作業者の配置がしやすくなるでしょう。
「この作業は2人でやらないと納期まで間に合わない」
「この人なら標準工数より○分早く終わらせる能力があるから、1日にこれくらいの量の仕事を任せられるな」
といったように、作業の効率化と人材の最適活用が実現できますよ。
また、
「この人は標準工数よりやや遅れ気味に作業する傾向があるから、もう少しトレーニングが必要だな」
といったように、作業者のスキル向上やトレーニングの必要性を見極めることも可能です。
競争力の強化
工数を適切に管理し、コスト削減に取り組み、価格競争力を高めます。
「この製品って工数かかりすぎで今の販売価格に対して利益でてないのでは?」
など、工数を改めて見直すことで今の価格設定が適切かどうかの判断ができますよ。
工場は工数に見合った原価管理を行い、会社にとって利益を出すことが重要ですからね。
競争が激しい市場での価格設定や利益率の向上は、企業を存続させるためには必須のポイントなるでしょう。
プロジェクトの成功率向上
プロジェクトの計画やリソース配分の精度が良ければ、成功率も高くなりますよ。
開発などの新規案件は、予期せぬトラブルが発生しやすいため、全てが上手くいく前提の理論工数のみで計画を立てると大幅に計画が崩れる場合があります。
開発系の案件は予めリスクを回避するための工数(リスク工数)も含めてプロジェクトを進めていきましょう。
リスク工数の求め方は、過去に発生した事例とそれに費やした工数を、日報などからデータとして吸い上げます。
過去に事例がなければ、専門の方やベテランの方から、おおよその工数を提示してもらうだけでも良いです。
工数管理の方法
工数管理がものづくりにおいてなぜ重要なのか、理解できたでしょうか。
作業者が日頃積み重ねてきた工数データは、ものづくりにおいて様々なメリットへ発展していきます。
では、このよな工数データはどのような方法で計算していくのか気になりますよね。
ここからは工数管理の方法について3つ簡単に紹介していきます。
工数データを吸い出すいろんな方法を参考にして、自分の職場でも実践してみましょう。
紙などの作業日報に記載
一番導入しやすいのが、作業日報などの帳票類に作業者が費やした工数を書いてもらう方法です。
フォーマットを作ってしまえば、あとは印刷して作業者へ配るだけでなので、非常にシンプルであるため、すぐに始められるでしょう。
ただし、工数の集計時に苦戦します。
- 紙からエクセルなどの計算ソフトに転記
- 作業者の字が読みにくい
- 作業名や時間表記の入力方法が人それぞれで異なる
このように、帳票類での運用はどうしても管理者や事務方の負担が大きくなってしまいますよね。
エクセル等で入力
作業者がエクセルに工数を直接入力していけば、転記作業もなくなりますし、ペーパーレスにもつながります。
作業名などもキーボード入力ではなく、ダウンリストなど設けて選択式にすれば、複数人の作業者がいても入力方法が統一されて集計もしやすくなるでしょう。
エクセルで工数の入力から集計まで行う際は、次のポイントを考えておく必要がありますよ。
- 現場にパソコンが必要
- 同じエクセルファイルは重複して編集ができない
- 入力方法の簡易化
特に工場の生産ラインにいる作業者一人一人にパソコンを配布し、その場で工数を入力する方法は、現実的ではありません。
工数管理ツールの導入
エクセルの場合、入力したデータを集計する際に、見たい情報に応じて複雑な計算が必要となります。
ある程度パソコン知識があれば関数や別ソフト等を駆使して自動集計できますが、やはり長く使い続けるには限界があるでしょう。
専用の工数管理ツールがあれば入力のみならず、誰でも簡単に集計や分析も自動で行えるため、リアルタイムで現場の稼働状況を監視できますよ。
また、タブレットや携帯端末で工数入力できる環境があれば、作業者がわざわざパソコンの設置場所へ移動したり、入力するタイミングに悩む必要はありません。
導入までに初期費用は発生しますが、工数管理が効率よくできれば、費用対効果も十分に期待ができるのでおすすめです。
まとめ
製造業において工数を正確に把握できれば、今まで見えてこなかった現場の状況が数字が表れるため、
- コスト削減
- 品質維持
- 適切な生産計画
など、様々な分野に大きく貢献できます。
ただし、なんとなく工数だけ入力しても、正しく集計・分析を行い成果に繋げないと意味がありません。
工数管理の最適化は、製造業の効率化と競争力を高める重要な鍵となるでしょう。
今まで工数を意識していなかった現場リーダー、製造社員の方々はこれを機に職場の工数管理について見直していきましょうね。
コメント