設備機械トラブルに出くわしたときに、自分一人で直せるようになるとカッコいいですよね。
でもほとんどの製造の方が専門知識がないために、複雑なメカ機構や電気配線を目の前にして、何をどう見たら良いかわからず、すぐあきらめる傾向にあります。
実はそこまで専門知識がなくても、見るべきポイントや流れを知っていれば、機械のどこが悪いかある程度の特定が可能となりますよ。
私はメカ系出身の技能者ですが、装置メーカー入社後の4年間は修理部門に所属し、客先で故障した装置の見積診断や修理対応を行っていました。
今回は、私が機械修理屋として学んだ故障個所を特定するコツを、新人エンジニア向けに紹介していきます。
本記事を読んで、機械トラブルとしっかり向き合い、職場や家族からカッコいいと尊敬されるメカニックを目指しましょう!
故障個所が特定できるようになると…
「修理屋でもないのに、製品の不良箇所を見つけるスキルって必要なの?」
「修理なんて自分の業務と関係ないし…」
機械トラブルが発生すると、サービスエンジニアや修理工などの専門の人に全て頼りたくなりますよね。
修理はしんどいと感じても、どこが原因で機械が異常となっているかわかるだけでも、後々メリットとなりますよ。
では自分で故障箇所を特定できるようになるとどんなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、製造社員に向けて故障個所特定のスキル習得を推奨する理由について4つ解説していきます。
まずはどんなシーンで役に立つのかをチェックしていきましょう。
迅速な復旧
故障個所がその場で特定ができるということは、問題解決までの期間が短く済むということ。
何か機械トラブルが発生すると、その期間現場の作業は止まり、使用者がイライラし始めます。
客先や工程内に関わらず、どんな工場でも歩留まりが生じてしまうのは嫌ですよね。
とりあえず状況をを確認し、原因がわかって自分で対応できる内容であれば、待ち時間も必要ないのです。
また、原因は分かったけど自分では修理できない内容もあるでしょう。
その場合、自分で診断した内容を専門スタッフに報告することで、現場へ向かう前の準備がしやすくなり、復旧作業がスムーズに進められますよ。
不具合の未然防止
修理や機械保全の経験を積んでいくと、
「この配線の取り回しはノイズを招きやすいな」
「この部品の固定方法は強度的によくないよ」
など、設計や組立の落とし穴を見抜くスキルが自然と身につくでしょう。
こういったものづくりの急所を設計チームや製造部門へフィードバックできれば、より品質が強化され、機械トラブルの未然防止につながります。
知識向上
機械の異常な動作は、電気・メカ・ソフトなど様々な分野から発生します。
専門分野に縛られないエンジニアは、どんなシーンでも活躍しやすいため、メーカーから非常に重宝されるでしょう。
難しく思えるかもしれませんが、最初はそんなに深い知識は無くても大丈夫ですよ。
なぜならメーカー対応の修理は、不具合個所がわかれば、ユニット単位で丸ごと交換するケースが多いからです。
確かに故障した真の原因をつかむためには、より深い専門知識が必要となるケースがありますが、不良品を触っていくうちに、
「この部品はこういう役割がある」
みたいな感じで広く浅い知識が身につきます。
広く浅い知識が身についてくると、多方面からのエンジニアとのコミュニケーションもとりやすくなり、より業務が円滑に進められるでしょう。
分解の上達
製造工程で組立していた人は、逆に分解する機会がほとんどありません。
診断時は機械の中身を見るためカバーを外すなどの分解作業が発生しますが、組立時に使っていた工具だけでなく、分解時に活躍する工具もあります。
使える工具の幅が増えるということは自身の技能上達にもつながるでしょう。
また、分解スキルが上達すると、自宅の家電やゲーム機などの修理も、
「意外と簡単じゃん!」
「このくらいなら自分で修理できるかも」
と思えるようになり、プライベートなシーンでも役に立つのです。
機械トラブルにおける診断のコツ
自分で故障個所が特定できるようになると、いろいろな面で役に立ちそうなので、ぜひスキルとしてとりいれたいところ。
では実際に機械が故障したら、まず何をしなければならいのでしょうか。
ここからは、機械トラブルにおける診断のコツを8つ紹介していきます。
機械トラブルにおける診断のコツを知って、自分が対応できる守備範囲を広げていきましょう。
症状を把握する
病院に来る患者から症状を聞く医者のように、壊れた機械の情報収集をしましょう。
- 機械の製造年月日
- 修理履歴
- 症状
- いつ異常に気づいたか
- どんな使い方をしていたか
など、ユーザーが把握している情報をわかる範囲で構いません。
壊れた製品の情報が明確であるほど、現物を見る時のポイントが絞られたり、故障に至った原因の仮説を立てやすくなります。
修理経験豊富なベテランの方は、症状を聞いただけで瞬時に故障個所を特定しますね。
ただし情報が間違っているケースもあるので、現物を見ないまま壊れた原因を断言しないよう注意が必要です。
症状の系統を整理する
症状が分かったら、その場でどんなタイプの症状なのかざっくり考えてみましょう。
私はよく、機械・電気・ソフトの3つに分けていました。
これらが整理できないと、余計な分解作業を招いてしまい、後々面倒になるからです。
- 駆動部分からの異音は機械要因
- 動作をまったく受けつかない場合は電気要因
- ある手順で機械を動かそうとするとおかしくなる等はソフト要因
このようにタイプ別に分けたら、要因別に疑われるところをまずは見ていきます。
何からして良いかわからないから適当に分解するのは、状況を悪化させたり事故につながるので控えましょうね。
バックアップ
ユーザーが作成したロボットを動かすプログラムデータなどは予めバックアップを残しておきましょう。
機械がすぐに直っても中身のデータが全部消えてしまったら、完全復旧とは言えませんからね。
診断中にデータが消えてしまうケースがあるので、何かあったとき元に戻せるようデバイス側が生きているうちに吸い出します。
基板交換や配線を抜き差ししただけでも消えてしまうため、バックアップを残さないまま作業を始めてしまわないよう注意が必要です。
外観チェック
分解前に、
- 傷
- 汚れ
- 凹み
- 焼け跡
がないか外観チェックをしましょう。
外観の状態で、なぜ壊れたかの原因につながる証拠が掴めるかもしれません。
例えば部品を止めているネジの頭がつぶれていた場合、
「一度客先で分解したのでは?」
「じゃあ、なんでここを一度外そうとしたのかな?」
などいろいろ、考察できるのです。
漏電チェック
電源を入れる前の事前確認として、まず漏電していないかを確認しましょう。
特に電源が入らない等の電気要因の症状は注意です。
症状確認しようとして電源入れた瞬間、工場のファクトラインが落ちてしまい、周辺機器の電源もすべて切れてしまうケースがあります。
大概のロボットは先にヒューズなどが切れるようになっていますが、最悪発火する恐れもありますね。
なので、基本的に修理品の診断をするときは、漏電対策用ブレーカーを使ったり、絶縁抵抗計などの専用テスターの準備をしてください。
配線チェック
ロボットが動かないなどの電気要因が考えられる場合は、配線を確認していきましょう。
電気って目に見えないから、ちゃんと各電子部品に正常な信号が流れているかどうかなんて判断できませんよね。
そんな時に使うのがテスターです。
修理屋にとってテスターは必須アイテムと言っても良いでしょう。
テスターは導通チェックや電圧などの測定ができるので、どこからどこまで電気が正常に流れているかの判断ができますよ。
テスターを使うことで、
- はんだや圧着不良による接触不良
- 内部断線
- リレーなどの接点不良
など、表面上見にくい電気トラブルが見つけやすくなります。
正常品との切り分け動作確認
配線が複雑で1本ずつ導通チェックでたどっていくのはちょっとめんどくさいと感じたら、正常なユニット部品と交換して比べてみるのもアリです。
そうすれば、おおよそどこのパーツが故障しているのかの切り分けが可能となるでしょう。
ゲーム機が操作をうけつけない時、コントローラ側が悪いのか、本体が悪いのか、ケーブルが悪いのかを抜き差ししていろいろ試してみますよね。
最初から全部見ようとせずに、範囲をだんだんと絞っていけば、そこまで悩まずに故障個所をみつけられるでしょう。
環境変化試験
さっきまで調子が悪かったのに、いつの間にか直ってしまうような一時的異常動作の原因特定は難易度高めです。
そんな時は周囲の環境を変えて、機器自体にストレスを与えます。
- 冷やす温めるを繰り返す
- タッピングして軽い衝撃を与える
- ケーブルなどゆすってみる
- しばらくランニングさせる
など、周りから様々な負荷を与えてください。
接触不良や温度依存が原因の故障個所が見つかるかもしれません。
ロボットの機嫌が悪くなる条件を探してみましょう。
まとめ
機械が壊れた場合、様々なアプローチから壊れた原因を特定できます。
故障個所さえ分かれば、応急処置もしやすいので、迅速な復旧に貢献できますよ。
修理の難易度はその時によってまちまちですが、なんでもかんでも自分は関係ないからと言って他の人に任せっきりにすると、現場力が身に付きません。
わからなくても良いで、まずは三現主義(現場・現実・現物)にのっとって、自分の目で症状を確認し、機械がどんな状態になっているかをしっかり見極めていきましょう。
不具合品を触る小さな経験の積み重ねが、後々のものづくりを強化するのです。
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