【赤と緑のロックタイト】高強度ネジロックで固まった部品の外し方

ノウハウ

機械のメンテンナンスや修理で部品を分解していると、

「ネジロックが固着して部品が外れない!」

といったトラブルにエンジニアはよく悩まされますよね。

高強度になるほど接着性が増し、機械的強度は期待できる一方で、外れにくくなります。

今回は、高強度ネジロックで固まった部品の外し方について、半導体装置製造歴10年以上のゆとり課長が簡単にわかりやすく解説してきます。

外す方法を知っておけば 現場のトラブルもスムーズに対応でき、工場内でめっちゃモテますので、ぜひ参考にしてくださいね!

高強度ネジロックとは

代表的な高強度ネジロックであるロックタイト601とロックタイト272

高強度ネジロックとは、永久固定を目的とした部分に使われる非常にシール性が高い嫌気性接着剤です。

高強度ネジロックは、ネジのゆるみ防止対策以外に、ピンやブッシュなどのはめ合い部分の接着用途でも使用できるため、基本的には「組付け後分解しない」を前提条件に塗布します。

人気接着剤ブランドのLOCTITE®(ロックタイト)シリーズの中で高強度ネジロックは、

  • 赤色のロックタイト(272・262・277 …) 
  • 緑色のロックタイト(601・648 …)

などが該当しますね。

赤色ネジロックは耐熱性にも優れているため、エンジンなどの熱が加わる部品にも使われていますよ。

無理やり外そうとすると…

後悔するサラリーマン

「組付け後分解しない」はずですが、修理や改造等で高強度ネジロック部分の分解に遭遇するケースがあります。

「これ先に外さないと先に進まないんだよな…」

「力いっぱい回せば、外れるかも!」

このような気持ちが先走って、部品を無理に外そうとすると様々なトラブルに巻き込まれ、二次被害が発生する恐れがありますよ。

どんなトラブルに巻き込まれてしまうのでしょうか…

ここでは、ネジロックが固着した部品を無理やり外してはいけない理由について4つ紹介していきます。

起こりえる現象を事前に知って、被害を最小限に抑えましょう。

ネジ頭がなめる

プラスドライバーや六角レンチで、ネジロックでガチガチに固まったネジを無理やり外すと力みが発生します。

手に力みが発生すると、ビット先端に加わる力がネジの垂直方向から外れて、ネジ頭の溝をえぐってしまうリスクが高いです。

一度ネジ頭の溝が広がってしまうと、ビットの先端とかみ合わなくなり、工具を使って緩めるのが一気に難しくなるでしょう。

ネジの首が破断

ネジ頭がなめないように、真っすぐねじの軸方向に力を加えながら外そうとすると、ネジ自体の強度が限界を迎えて、ネジの首がぽきっと折れてしまうでしょう。

ネジの頭が破断してしまうと、ネジロックで固定されているネジ部(タッピング部分)だけが加工品に取り残されてしまい、救出が更に困難となってしまいます。

ネジ山が破損

「ちょっと緩んできたぞ!」

「おかしいな、いくらネジを回しても、ネジが回り続けるだけでとれない…」

工具で掴んだネジが少し動きだしたので、喜んでネジを回し続けた結果、硬化したネジロックが、めネジ側のタッピングを削って破壊してしまうパターン。

ネジがダメになるのではなく、相手(加工品)側をダメにしてしまうため、外せたとしても、最悪加工品の作り直しになるでしょう。

工具が壊れる

頑張って力いっぱいに外そうとした結果、工具の強度が負けてしまい、工具が壊れてしまう可能性もあります。

工具を失うだけでなく、最悪工具が折れてケガに繋がるケースもあるので、「だめだ硬い」と思ったらすぐにやめましょう。

私が新人の頃、ネジロックが固まってびくともしないネジをフルパワーで外そうと試みた結果、自前で購入したPBの六角レンチを曲げてしまい泣きそうになりました。

高強度ネジロックで硬化したネジを外す方法

「じゃあどうすればいいんだよっ!」

「高強度ネジロックがついた部品を外す方法ってないの?」

工具を使っても外れないと分かった時、悩んでしまいますよね。

安心してください、高強度ネジロックで固まった部品を外す方法はあります!

メーカー(ヘンケル)の公式HPでも紹介されていますが、熱を加えることで、外しやすくなります。

では実際にどのような手順で外すのでしょうか…

今回は、はんだごてを使って高強度ネジロックで固着した六角穴付ボルトの外し方を例に紹介していきます。

道具さえ準備できれば、誰でも簡単に外せるので、ぜひ参考にしてください。

段取り

高強度ネジロックで固まったネジを外すときに使う道具

熱を加えたら、熱が逃げないうちにスムーズな分解をする環境が必要です。

熱を加える作業の前に必ず以下のアイテムを準備していきましょう。

  • 六角レンチ(T型レンチ推奨)
  • ラジオペンチ(熱したネジをつかむ用)
  • 万力(部品の固定用)
  • 手袋(革など耐熱性あるもの)
  • 灰皿(外した熱々の部品が置ける耐熱性あるもの)

加熱する道具は今回ハンダコテを選定していますが、もちろんヒートガンなどでも対処できます。

ただし、ヒートガンを使用する際は周りに熱で溶けてしまうような材質のものがないか、よく確認しておきましょう。

加熱する

ネジの頭にはんだこてをあてて熱する様子

使用した高強度ネジロックと硬化させた部品の条件は以下の通りです。

ネジロック剤LOCTITE_272
硬化条件室温20〜25度で約48時間
おねじ側SUS_六角穴付ボルトM4×6
めねじ側SUSの端材

もちろん、普通に六角レンチで外そうとしてもガッチガチでびくともしません。

道具の準備ができたら、万力に挟んでハンダコテをネジ頭にあてて十分に加熱していきます。

コテ先の温度は355度で2分程度ネジ頭にあて続けました。

公式HPによると、加熱温度は250度あれば十分みたいですね。

ゆるめる・叩く

熱した直後にTレンチを使ってネジを外す様子

熱した直後に、六角レンチを使ってネジをゆるめていきます。

当然ですが、熱したネジはめちゃくちゃ熱いので絶対に触らないようにしましょう。

しっかりネジを押し付けながら、ゆるみ方向に力をかけると、「パキッ」と固着したネジロックが剥がれるような手ごたいが感じられ、そのまま普通に外すことができます。

貫通ドライバーなどのインパクトツールで叩いて衝撃を与えるのも有効ですよ。

びくともしないようだったら、諦めずに再度加熱してチャレンジしてみましょう。

掴む

やけどに注意しながら外したねじをラジオペンチで掴む

ゆるんで部品が外れそうになると、つい油断してしまうのですが、絶対に素手で掴んだり、耐熱性のない机に置かないように注意してください。

外した部品はラジオペンチで掴み、灰皿など耐熱性をもった器へ移動させて、冷めるのを待ちましょう。

まとめ

高強度ネジロックで固着したネジの外し方について解説していきました。

外し方は、高強度ネジロックを塗布した部分に対し250度加熱することで、接着効果が弱まって外れやすくなります。

ハンダコテがなくても、バーナーやライターで対応可能ですが、やけどには十分に注意してください。

かなりマニアックで簡単な技かもしれませんが、ものづくりにおける現場作業のトラブルというのは、こういった細かい知識の積み重ねや経験が非常に役立ちますよ

現場のトラブルを迅速に対応し、周りからできる人材として認知してもらえるよう頑張りましょう!

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