員数不足によるクレームで早急な対策を迫られたときに役立つ改善方法を、半導体装置製造歴10年以上のゆとり課長が簡単にわかりやすく解説していきます。
員数不足とは
員数不足とは製造業において、製品などが決められた数量に対して少ないことを指します。
反対に、決められた数量に対して多い時は員数過多と言います。
どちらにしても、納品先で数量が違うと混乱が生じ、後工程や出荷先で影響が生じてしまうでしょう。
みなさんも、買い物で注文した商品の数が実際に違うと分かったときに、「このお店大丈夫かな?」と不信感を抱きますよね。
員数管理がきちんとできていないメーカーは、自社工場にて歩留まりや納期遅延が発生するだけでなく、客先からの信頼性を失い、今後の取引にも影響が生じてしまうのです。
したがって、員数間違いによるクレームはしっかりと重く受け止めて、なぜ発生してしまったのか原因を追究し、対策を練らなければなりません。
員数不足が発生する原因
人で員数管理をしている以上は、
- 数え間違い
- 確認漏れ
などのヒューマンエラーがほとんど。
「人間だもの、間違いはしょうがないよ、許してよ」
と言いたいところですが、会社ではそうもいきません。
なぜ人が員数管理すると、数量間違いが発生してしまうのでしょうか…
ここでは、員数不足が発生する原因について3つ紹介していきます。
参考にして、クレーム対策会議や現場ミーティングのネタにしましょう。
また、数え間違いだけでなく、現品の取り間違いに関しての記事もあるので、併せて参考にしてください。
「気をつけて」という意識付けのみ
ものを数えるという単純作業が故に、
「数え間違いないよう気をつける以外に改善の余地ないでしょ!」
と最初から作業者の意識付けのみで、終わらせようとしていませんか?
気合いと根性だけではいつか集中力がきれて、また再発してしまうケースがほとんど。
よくクレーム対策を上司に報告する際に、
「今回のクレーム対策としては、作業者及び関連部署に注意喚起を行いまして…」
といった内容の報告書を提出し、上司から
「注意喚起しただけ?これが対策と言われてもお客さん納得しないよ!」
と指摘を受ける現場リーダーを見かけます。
現場責任者は作業ミスの再発防止策を考えるとき、単純作業であるほど原因の深堀を怠り、「気をつけて」の一言で片づけてしまいがちなのです。
ピッキングのルールが定められていない
数え方やピッキング時に見るべきポイントが人それぞれになっている場合があります。
同じ職場の同じ作業であっても、ミスが多い人、少ない人が顕著に分かれていませんか?
ピッキング時の作業手順やルールが明確になっていないと、作業者によって精度がばらつきますよ。
- 数え方
- 作業中断時の対応
- 一度にピッキングする量
などミスが少ない人のやり方や行動を参考にして、標準作業の見直し、もしくは新たにルール定める必要があるでしょう。
ダブルチェックに頼りすぎ
出荷前に数量を再確認(ダブルチェック)する工程があるのに、員数不足がスルーしてしまった経験はないでしょうか。
おそらく、工場あるあるだと思います。
「今日は疲れたし早く帰りたいな…」
「やばい!早くしないと納期に間に合わない!」
このような状況に陥ると、人間の心理にダークサイドな思考が発生します。
結果、
作業者A「B君が後で数量チェックしてくれるから大丈夫やろ」
作業者B「A君あんまり数え間違いしないから大丈夫やろ」
といった感じに、お互いが過信してしまい、員数不足などのクレームに繋がってしまうのです。
意味ないダブルチェックは見ていて切ない…
員数不足を防ぐ簡単対策
「明日までに対策たてて報告しろと言われたどうしよう…」
「すぐにできる員数確認方法を知りたい!」
本当はさっさとIoT導入の波に乗っかり、なるべく人の作業を撤廃したいところですが、予算の都合などもありすぐには難しいでしょう。
現状レベルで員数不足をどう防げばいいのでしょうか…
ここでは、お金をかけずに員数不足を防ぐ簡単対策を8選紹介します。
チェックして、できそうなものがあれば、ぜひ取り入れてみてくだいね。
指さし・声出し確認
「は?」と思うかもしれませんが、めちゃくちゃシンプルで今からすぐに始められる効果的なポカヨケ手段です。
指差し声出し確認は、安全第一を常にはかる工事現場や駅員が基本動作として取り入れており、体を使いながらチェックすることで集中力が高まり、より確実な作業が期待できます。
また、声を出しながら数えることで周囲へ「今この人カウント中だ」という情報がすぐに伝わり、作業中に横から話しかけられることもなくなるでしょう。
これなら、作業中断における数え間違いのリスクも削減できますよね。
チェックシートの導入
対策の定番であるチェックシートです。
わざわざ専用のチェックシートをつくらなくても、数量が記載されている伝票類へ直接記載する運用でも良いでしょう。
例えば、伝票の数量が記載されている付近にレ点、氏名を記載しておけば、誰が何の員数確認をしたのかが明確になります。
かなりアナログな方法ではありますが、一定期間、帳票を残すことで、「私ちゃんと数量チェックしました」という履歴になりますよ。
履歴に残るということは、ピッキング作業者やダブルチェックなどの各担当者にも責任感が生まれるでしょう。
重さで判断
ネジや電子部品などの細かい部品を大量に出庫する時、1個1個手で数えるのは非常に手間となるでしょう。
予め1個単位の重さを計測しておけば、総重量から数量を特定できます。
重量のばらつきを考慮した補正機能付きや、前もって品目情報を登録できる、数量チェック専用の量りが各メーカーから販売されていますよ。
ただし、1単位分のわずかな重量誤差は、どんどん蓄積されていくと、最終的に個数を算出する際に影響が生じてしまうため注意が必要です。
量りを導入する際は、一度に測定する量の上限や、校正をどうするかなども考えておきましょうね。
高さで判断
板形状の重ねておけるものに対して有効な数量チェック方法です。
製品本体の厚みと重ねたときの厚み(高さ)を比較して、数量を算出します。
「ここまでの高さまで積み上げられていたら数量は10個」みたいな感じで、印字されたスケールがあれば視覚的にもわかりやすいでしょう。
余談ですが、昔どこかの回転寿司屋が会計時に皿の枚数カウントで使っていました。
今は、ほとんど自動計測機を導入しているので、店員さんが目視で皿を数える姿もあまり見なくなりましたね…
※最近の回転寿司店のシステムがヤバいくらいに進化していてるので、非常に参考になります。
区切りや印をつける
「どこまで数えていたっけ?」
「複数人で数えていたら、カウントが重複してしまったかも…」
このようなケースが生じてそのまま作業を継続させてしまうと、員数間違いに発展するリスクが一気に高まりますね。
そうならないためにも
- 10個ずつ等に区切って数える
- カウント済みのものはわかるように印を残す
といった、ちょっとした工夫も有効です。
別作業者への引継ぎや、間に休憩をはさんだ場合を考慮して、確実にどこまでやったかを明確にできる仕組みが重要と言えます。
実物を数えてから正解を確認
数量チェック時をなあなあに終わらせてしまうのは、確認する前から頭の中に正解の数がわかっているからなのでは…?
人間というのは不思議なもので、疲れてくると差異があったとしても正解につられてしまいがちに…
例えば、伝票の指示数が100個であることを確認してから現物を数えると、中身は99個であっても、100個に数えたがるのです。
なので、現物の数を数えてから伝票の指示数を確認する順番でやった方が間違いに気が付きやすいと言えますね。
この場合、
「実物カウントしたら99個だった」
→「指示数は100個…?」
→「あれ1個足りない!」
と気づきやすい。
正解は答えた後に見るクイズ形式にすれば、ダブルチェック時にもきちんと確認できるでしょう。
専用トレー
アナログ対策の王道である専用トレーの導入は、製造現場の自動化が難しい工程などで、効果を発揮するでしょう。
トレーに製品が1個ずつハマるような仕切りがあり、そこへ最後まで敷き詰めていけば、決まった数が誰でも簡単に用意できるというもの。
- 1個ずつ数える必要がない
- 誰でも見ればすぐ多い少ないの判断ができる
といったメリットがありますよ。
一方で、
- 専用トレーを何個用意して、どこに保管しておくか
- サイズが合わないものはどうするか
- 工程内にどう流していくか
などの運用ルールが部門間でしっかり固められていないと、中途半端な改善に終わるので注意しましょうね。
必要数のみ手元へおく
製品をピッキングした後に1個ずつ梱包材へ詰める作業があるとします。
この場合、梱包材を用意する際は、必要分だけを事前に準備しておけば、現物数量との照合がしやすくなりますよ。
最後に手元でどちらかが余ったら、
「あれ?必要分しか準備してないのになんで余ったんだろ…」
と員数不足に気づくケースがあるからです。
まとめ
すぐにできるお金がかからない員数不足対策について紹介してきました。
工場のIoT化が進む中、画像認識とかセンサー検知機能でカウントする方式と比べるとイケてないかもしれませんね…
ですが、アナログな手段でも、知識として取り入れておけば、どんな仕事においても応用は効きやすいです。
また、根本的な解決を目指すには原因究明がとても重要です。
ポカミスの再発防止対策は思いつきでどんどん取り入れるのではなく、必要最低限に留めておく事がベストと言えるでしょう。
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