工場の品質保証部門の仕事内容について、半導体装置製造歴10年以上のゆとり課長が簡単にわかりやすく解説していきます。
品質保証とは
品質保証とは「製品の品質を保証するために必要な業務」です。
…こんな説明だと「いや、そのまんまじゃないか」と思っちゃいますよね。
私もそうでしたが、工場勤務になって初めて品質保証という言葉を聞いた時に、いまいち何をしている部署なのかよくわかりませんでした。
例えば…
客先に「うちの工場で作った製品は何も問題なく安心してお使いいただけますよ」と口で言うのは簡単ですよね。
しかし、何を根拠に「問題なく安心できる製品」と言えるのでしょうか。
「従業員一同まごころ込めて真剣につくっているから問題ないに決まってんだろ!」という説明が通用すれば良いのですが、そうはいきません。
品質保証は「正常な製品」の根拠となるデータや製品に関する調査を行い、顧客から信頼を得るモノづくりを確立していきます。
品質保証と品質管理の違い
長年工場勤務していると、新入社員から「品質保証と品質管理の違い」についてよく質問されます。
私の勤務先もそうですが、工場によってはわざわざ「品質保証部」と「品質管理部」で部門を分ける場合がありますよ。
この2つの定義はいろいろありますが、簡単に言うと、品質保証は出荷済みの製品、品質管理は出荷されるまでの製品を対象にそれぞれ業務対応を任せられるでしょう。
要するに、市場へ出ていったかどうかで担当窓口を変えている工場が多いようです。
品質保証部の仕事内容
品質保証の業務はとても責任重大であるため、工場勤務内では花形職場(エリート集団)とも言われています。※すみません、品証にめちゃくちゃプレッシャーをかけちゃいました
品質保証部は日頃どんな仕事をしているのでしょうか…
ここからは、品質保証部の主な仕事内容について4つ紹介していきますよ。
仕事内容を把握して、品質保証がメーカーにとってなぜ重要なポジションなのかを理解していきましょう。
原材料の調査
製品に使われている原材料が一定の品質を満たしているかの調査をしていきます。
ユーザーから原材料の品質に関して問われたとき、
「どこで仕入ている材料かよくわからないけど、うちで組んでいる製品は安心できますよ!」
なんてメーカーの回答がきたらびっくりしちゃいますよね。
出荷品に使用されている部品や原材料におけるデータを収集して、品質保証を裏付ける報告書などを作成していきますよ。
場合によっては、社内で実験してデータを取得することもあります。
客先や環境によって禁止されている成分が、製品から検出されると、後々大問題となってしまうでしょう。
検査成績書の作成
客先によっては、
「この製品ちゃんと検査してるよね?」
「どんな検査しているの?」
などの質問がくるので、メーカー側は出荷品と一緒に検査成績書と呼ばれるものを提出する場合があります。
検査成績書を発行することで、規格通りの製品であることが証明され、出荷先でも納品しやすくなりますよ。
各々の工程にいる検査担当者が現場で記載した検査表を基に、品質保証部がまとめて検査成績書を作成します。
現場の検査表を適当に書き写すだけでなく、検査目的や内容をきちんと理解し、顧客から質問があった際に上手く説明するのも品質保証部の役割です。
クレーム対応
市場にてクレームが発生した際は、品質保証部がメインで対応していきます。
クレーム現品をよく解析して、
- 有償無償の判断
- 発生原因の特定
- 再発防止策の検討
などを報告書にまとめ、最終的にはユーザーへ説明しに行きます。
クレーム対応においては品証の中でも、工場内で現品を調査する人と客先対応する人で、役割はそれぞれ分かれるでしょう。
クレーム対応は工場サイドと客先が直接関わる重要な場面であり、調査内容や説明の仕方によって信頼性は大きく左右されるため、工場側も品証の人選は慎重に行っていきますよ。
工程改善
市場へ流れた出荷品の保証は、品質保証部が責任をもって対応するため、品質保証部が工程内に関与する権利は十分にあります。
「なんか問題が発生しても、品証が上手く対応すればOK」
なんて考えが製造現場にあると、良いものづくりに発展しませんよね。
そもそも問題がある製品を流出させないのは当然であって、工程内でNG品が生産されないしくみが重要となってきますよ。
品質保証部は各工程を担当している従業員や技術部門と連携しながら、高品質なモノづくりが維持できる改善活動を求められるでしょう。
品質保証に向いている人
品質保証部の仕事内容についてざっくりですがイメージできましたでしょうか…
他にも品質に関わるような業務であれば、ほとんど品証が判断を委ねられるため、ものづくり現場の様々なシーンで登場するでしょう。
そんな責任重大である部署には、どんな人材が適しているのか気になりますよね。
ここからは、品質保証に向いている人の特徴について3つ紹介していきます。
特徴を知って、自分が品証の仕事に適正しているかどうかをチェックしてみましょう。
専門知識を深めたい
品質保証の仕事は、ものづくりにおけるほぼ全てのプロセスに関わるため、幅広い業務対応を任せられます。
幅広い業務を円滑に進めていくためには、様々な分野の知識習得が必要となってくるでしょう。
例えば、
- 機械、電気、化学、ソフトなどの技術系知識
- ISOやJISなどの品質マネジメントシステムに関わる知識
- 自社製品の仕様や検査基準
など様々です。
研究好きな方や、自身が学んできた専門分野の知識を更に向上させたい方にはおすすめの職種ですよ。
数字をみて話せる
品質保証するためには、科学的な根拠が必要であるため、「なんとなく…」とか「見た感じ…」といった曖昧な表現を使うとみんなから嫌われます。
品質を語る上で、
- 製品のスペックを示す値から得られた表やグラフ
- 図面や測定器から読み取れる寸法値
など複数のデータと常に向き合いながら、話を進めていく必要がありますよ。
理系や文系に関わらず、結果を数字で表すことに抵抗がない方が向いているでしょう。
柔軟な対応
工程内の品質トラブルから市場のクレームまで、品質保証部は何かとイレギュラーな対応に追われます。
問題に対して、
- どのようなアプローチで取り組むか
- 落としどころはどうするか
など、それぞれの状況に応じて対応は変わってくるでしょう。
周囲の声や憶測に流されてしまわないよう、冷静に判断する思考も重要です。
まとめ
品質保証部の役割とは、製品やサービスの品質を確保するであり、会社の信頼性や競争力の向上には欠かせない、とても重要な存在ですよ。
たった一度でも品質を疎かにし、信頼性を失ったメーカーは、立て直すまでに相当苦戦するでしょう。
どんな有名企業でも、品質トラブルの内容にとっては、存続自体が危ぶまれる結果となるかもしれません。
そのため、品質保証部の仕事をする人材は、会社内でも期待されたメンバーで構成されることが多いのです。
周囲のプレッシャーや責任感で「品証の仕事つらい」と感じてしまう方も多いようですが、どんな仕事おいても、向き不向きはあります。
品質保証の仕事は幅が広いため、いろんな分野のスペシャリストが集まり、それぞれの業務をお互いカバーし合うなどのチームワークも試されるでしょう。
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